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2022/04/20

生理の異常と正常の違いとは?今こそ知りたい生理の基本

ど~んと重い生理痛や、生理前のだるさ、周期が安定しない月経不順(生理不順)など、「これって大丈夫?」と心配ながらも、人には相談しづらい生理のトラブル。「病気じゃないから」と我慢しがちですが、日常生活に支障を感じるほどの症状は“異常な生理”のサインかもしれません。トラブルを放置することで、病気の発見が遅れたりしないように、改めて生理を見つめ直してみませんか?長年付き合ってきたのに意外と知らないことも多いので、正しい知識を備えて、今とこれからの健康へつなげましょう。

その症状は“異常”のサインかも?!正常な生理とは?

長年、生理と付き合ってきた大人の女性の多くは、生理前後に何かしらのトラブルを経験されたことがあるのではないでしょうか。でも、「周期が短い?」、「この量、多すぎる?」と気になっても、生理は個人差があるものだから、どこまでが正常で、どんな症状が異常なのか、判断が難しいですよね。

基本的に、正常な生理の範囲は、

  • ・周期 25~38日(前後6日以内)
  • ・期間 3~7日間(平均4.6日)
  • ・経血量 20~140ml
  • ・閉経 43~54歳

とされています。
正常な月経サイクルの場合、25〜38日の間隔で定期的に生理が来ますが、この周期を外れている場合は“月経不順”ということになります。
また、気になる痛みや不快な症状については、日常生活に支障をきたすほどだと“月経困難症”と診断される場合もあります。そのため、月経困難症に含まれる症状は幅広く、下腹部や腰の痛みに加え、頭痛、お腹が張る感じ、食欲の低下、吐き気、下痢のほか、疲労感、めまい、動悸などの症状や、イライラや不安感などの精神症状を伴うことも多いようです。
それと同じような症状が、生理の3~10日前から始まり、生理が始まると治まる“月経前症候群(PMS)”にも現れます。
月経不順や月経困難症、月経前症候群(PMS)はどれも異常な生理、つまり“月経異常”に含まれるトラブルの一種。いつも悩まされてきた症状や状態が月経異常と診断されれば治療の対象になるので、一人で悩まず婦人科に相談を。

生理痛はどうして起こる?生理の仕組みで解説

日常生活に支障が出るほど不快な症状に悩まされる月経異常、つまり“異常な生理”は、どうして起こるのでしょうか。まずは、改めて生理の仕組みをおさらいしましょう。
生理(月経)とは、「通常、約1カ月の間隔で起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」と定義されています。ご存知のように、これは妊娠のための準備として繰り返されているもの。約1カ月に1回、卵子が排出される(排卵)と同時に、子宮内膜が厚くなり受け入れ態勢を整え、受精卵が着床しなかった場合、厚い内膜が不要となり、子宮から剥がれ、血液とともに体の外へ排出されるのが生理です。
そして、生理痛はその排出の際に起こります。子宮から剥がれる際に、子宮内膜から子宮を収縮させるプロスタグランジンという物質が分泌されるのですが、その量が多すぎると、過度に子宮が収縮することで血液循環が悪くなり、痛みが強くなるのです。

排卵や生理は複雑なホルモンの働きが司る

これまで排卵や生理の仕組みをご説明しましたが、そのシステムは子宮だけで行われるのではなく、脳の視床下部と下垂体、卵巣、子宮が協働しあうことで成り立っています。そしてそのカギを握るのがホルモンです。
脳の視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌され、その働きによって下垂体に卵胞刺激ホルモンを分泌。すると卵巣で卵胞(卵子が入っている袋のような組織)が育ち、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが分泌されます。そのエストロゲンが引き金となって、脳の下垂体から黄体形成ホルモンが分泌され、それに反応して卵胞から卵子が排出されて排卵が起こります。
排卵後の卵胞は黄体(妊娠を維持するための別組織)へと変化し、女性ホルモンであるプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌。既にエストロゲンの働きによって厚く成長してきた子宮内膜を安定化させ、受精卵が着床する準備を整えます。不要となると排出されて、排卵から約2週間で生理が始まるのです。

このように、排卵や生理はいくつものホルモンが複雑に影響しあって成り立っているもの。どこか一カ所でも異常があると、月経周期が乱れてしまいます。そのうえ、最初の指令を出す脳の視床下部は、自律神経の中枢ともいえる部分。自律神経は疲れやストレスと深い関係にあるためバランスが乱れやすく、その乱れが視床下部に響いて、ホルモンのバランスも崩れやすくなってしまいます。
実際、月経不順や無月経は、何らかの病気が原因の場合もありますが、多くは過度なダイエットやストレスによるホルモンバランスの乱れが原因といわれています。生理が心や体調の変化によって左右されやすいのは、こうした理由があるのです。

月経不順は年齢によるホルモン変化が原因の場合も

排卵が起こり、子宮内膜が厚くなり、妊娠しなければ子宮内膜を排出して子宮内をリセットする。約28日間で起こるこの働きが繰り返される生理は、波のように上下するホルモンの量によって周期的に続いています。
女性にはそんな月単位で変化が訪れる波がある一方で、もう一つ、人生のライフステージに沿って変化していくような、何十年もかけて動く大きな波があります。その波を形成する女性ホルモン(エストロゲン)は、“思春期”に分泌され始め、妊娠・出産に適した“性成熟期”といわれる10歳代後半から20歳代で分泌量のピークを迎えます。その後、ゆっくりと減少しはじめ、揺らぎながら“更年期”といわれる50歳前後を境に分泌が止まり、閉経へ。この閉経前の揺らぐ時期は、女性ホルモンの分泌が激しく上下するので、月経周期が乱れやすく、体調にも様々な影響が及ぶのです。

生理の異常を防ぐためにできること

周期や期間、量に問題がある月経不順や、痛みや不快感に悩まされる月経困難症、生理の前につらい症状が訪れる月経前症候群(PMS)なども含む“月経異常”は、強い症状には治療が必要ですが、毎日の生活を見直せば少しラクになるかもしれません。

【日常生活で気を付けたいこと】

  • からだを冷やさない
    冷えは生理トラブルの大きな要因といわれています。衣服に気をつけるほか、足浴や半身浴なども生活に取り入れてみましょう。
  • 過度なダイエットをしない
    栄養バランスの乱れや、急激な体重の減少は身体にとってストレスになります。自己判断による食事制限や過度なダイエットは避け、バランスのよい食生活を心がけましょう。
  • ストレスをため込まない
    ストレスはホルモンバランスが乱れる原因といわれています。現代の忙しい女性には難しいですが、できるだけストレスをためないように十分な睡眠を取り、規則正しくリラックスした生活を心がけましょう。
  • 適度な運動を取り入れる
    血流を改善するためにも、身体を冷やさないためにも適度な運動は有効です。ヨガやウォーキングはもちろん、全身の屈伸運動をするだけでも効果があるので、積極的に身体を動かしましょう。

そのほかに、血の巡りを高める方法として、漢方薬を取り入れるのもオススメです。生理痛や月経不順の方によく処方される「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」や「温経湯(うんけいとう)」などの漢方薬は、全身の様々な症状を改善しながら生理を整えてくれるので、試してみるのもいいですね。

栄養状態がよくなったこともあり、初潮年齢が早まり、社会の変化に伴って少子化が進む現代は、一人の女性が生涯に経験する生理の回数が、何人も子どもを産み・育ててきた昔と比べて約10倍も多いのだとか。昔は「病気じゃないから」と我慢することも多かった生理トラブルは、現在では「我慢してもメリットはない」とされています。生理そのものが身体に負担をかけるといわれる今、少しでも不快な症状を減らすように、治療を受けたり、薬を正しく上手に利用して、健やかな毎日を送りましょう。

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