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2023/08/02

【ロート製薬 未来社会への取り組み:第1弾】
若手社員が貧困による失明問題に挑むサステナブルブランド「eyeforthree」

身体と心の健康を支え、社会の未来に貢献したい。
ロート製薬はそんな想いのもと、さまざまな取り組みを続けています。皆さまに健康をお届けするには、自分たちが健康であることが基本。健康な身体と心で、情熱をもって仕事に取り組む健康人財こそが、会社や社会、未来をも支えていくと考えて、“個”を尊重し、社員個人の志を応援してきました。
その取り組みの一つとして、2020年に多様な働き方を推進する新プロジェクトを設立。社会課題に向き合い、起業する社員を、社内クラウドファンディングで支援する「明日ニハ」が始動しました。
今回は、そこから誕生した1つの会社「eyeforthree(アイフォースリー)」をクローズアップ。目薬容器の廃プラスチックでアイウェアを作り、その売り上げの一部で世界の貧困層の白内障手術を支援しています。一社員でありながら経営者となった27歳の女性が、環境問題と貧困による健康問題に挑む「eyeforthree」に込めた想いを聞きました。

語ってくれたのは、

ロートネーム:おかりな

ロートネーム:おかりな

社内起業家を支援し、多様な働き方を推進

―「明日ニハ」はどんなプロジェクトですか?

社内クラウドファンディングで、社会課題と向き合う社員を応援するプロジェクトです。
細かなビジネスプランを作り、いくつもの審査を経た後、トップの承認を得られると会社設立が決まるのですが、その際の出資額は、全社員を対象とした社内クラウドファンディングで決まります。実は、この「明日ニハ」というプロジェクト自体も社員の発案。以前から有志社員のプロジェクトを支援したり、複業を解禁するなど、個の力を生かす環境を築いてきたロート製薬には、前向きにチャレンジする文化が根付いているのです。

―「eyeforthree」には、どれくらいの方が賛同されたのですか?

415人もの方にご支援いただきました。合同会社なので全社的に近況を報告しているのですが、様子を気にかけてくださったり、相談に乗っていただくことも多くて、皆さんに見守られ、支えられていることを実感しています。

―そもそも「eyeforthree」ってどういう意味ですか?

「eyeforthree」は、「あなたの目と、海の向こうの人々の目、地球」の3つを守るためのアイウェアとして名付けました。今まで捨てられていた目薬容器の廃プラスチックで、紫外線から目を守るメガネやサングラスを作り、その売り上げの一部をインドやベトナム、インドネシアの貧困層の白内障手術や、メガネの提供に寄付することで、持続的に世界の目の健康に取り組むのが目標です。

廃プラスチック

社会課題に目を向けたはじまりは、インドの子どもたち

大学生の時にサポートをしていた外国人インターン生に、「貧困のイメージもあるけど、ITの発展や経済成長もすごい不思議な国」だと聞いてインドに興味を持ったんです。そこでNGO(国際協力組織)に参加してインドを訪れ、スラム街と呼ばれる貧困の激しい地域でボランティア活動をすることになったのですが、想像を超える実情にただショックを受けるばかり。貧しさに加えて、そこら中にゴミが捨てられていたり、宗教的に大切にされている牛がすぐそばで糞をしているような環境など、自分が当たり前だと思っていた生活が、そこにはまったくなかったのです。

インドの牛

例えば、日本では下痢と聞いても、それほど深刻には感じませんが、インドでは5歳未満の子どもの死因1位なんです(2017年当時)。その原因はさまざまで、病気になっても近くに病院がなくて行けない、治療を受けるお金がないだけでなく、衛生環境の悪さも大きな一因。先ほどお話ししたような菌に接触しやすい環境なのに、手を洗う習慣が当時はあまりなかったのです。
そこで、なんとか子どもたちの下痢を防ぎたいと、クラウドファンディングで、捨てられてしまう石鹸をリサイクルし、スラム街へ送る活動に取り組んだのですが、日本とインドという距離の難しさもあり、継続することができませんでした。

世界中の“当たり前の健康”を守るためにできることを

大学卒業後、海外でも現地の方の健康に貢献していることに魅力を感じてロート製薬に入社したのですが、目薬の担当となって学ぶ中で、健康を守るうえで目がとても大切なことを知ったのです。一方で、紫外線の強いインドでは、若者や子どもも含めて、白内障が原因で失明する人が少なくないことも知りました。実際、去年訪れたインドのスラムでは、自分に白内障の疑いがあることも、手術をすれば失明を免れることも知らない人たちに出会いました。
子どもが下痢で亡くなることも、白内障による失明も、日本では防ぐことが可能です。この大きな違いを目の当たりにして、「生まれた場所が違うだけで、当たり前の健康さえ守れない世界を変えたい!」と強く感じたのが「eyeforthree」の出発点。もともとロート製薬は白内障手術の眼内レンズを作っていることもあって、白内障に詳しい方が多く、資料も豊富。「それなら、白内障手術という目の健康を守る事業で貢献しよう」と考えたのです。

インドの子ども

目薬ボトルの廃プラスチックをアップサイクル

―「eyeforthree」のアイウェアは、目薬容器をリサイクルしているんですね。

廃プラスチックといっても、使用済みの目薬ボトルを回収して再利用するのではなく、製造の際に出る端材や、今までは廃棄していた、品質基準に満たないボトルを使っています。
目薬は直接目に入れるものだから、無菌状態で製造されるのはもちろん、すべての基準がとても厳格。容器にほんの少し傷が付いたり、文字が部分的に欠けているだけでも、安全に使っていただけない可能性があるため、不良品と判断されるんです。そんな場合、ほかのアイテムなら溶かして成型し直すこともできるのですが、目薬は100%新品のプラスチックしか使えません。となると廃棄するしかないのですが、目薬容器の素材なので、高い紫外線カット機能を備えていることに変わりはありません。そこで、その機能を生かしてサングラスを作ろうと考えたんです。

PET粉砕材イメージ

―廃ブラスチックをサングラスにするのは難しかったそうですが。

そうなんです!普通のサングラスは、プラスチックの中でも、ナイロンやアセテートといった種類の素材が使われているのですが、目薬容器はPETなので、作っていただくグラスメーカーさんにもノウハウがありません。しかも、リサイクル素材を使うので、黒い点ができてしまったり、部分的に白くもろくなったり、うまく型から外せなかったこともありました。それでも、「目に使うものだから安全でないと」と、メーカーの皆さんが諦めずに何度も改良を続けてくださったおかげで、塗装や混ぜ物なしで100%リサイクルPETだけのサングラスと、メガネを作ることができました!

100%リサイクルPETのサングラスとメガネ

目に優しく、誰にでも似合うデザインのアイウェア

―「eyeforthree」のアイウェアの魅力を教えてください。

目薬ボトルが原料なので、紫外線やブルーライトをカットできるのが一番のポイントです。そのうえ、25g(目薬容器約5個分)という驚きの軽さ!柔らかくしなるので、顔の形にフィットするのも魅力です。

顔の形にフィット

もちろんデザインにもこだわっていて、日本人の眉や鼻、耳の位置や形を考えて設計しています。何パターンも試作を作り、社内の人に意見を聞きながらたどり着いたデザインは、眉が出すぎない形やフラットなシルエットのボストンタイプ。多くの人に似合いやすい、ユニセックスなベーシックデザインです。

ユニセックスなベーシックデザイン

購入くださったお客さまにも、「このサングラスは似合うから毎日つけています」、「すごく軽くてキツくないから、ずっとかけていられる。目を紫外線から守れてうれしい」と大好評!気に入ってサングラスとブルーライトカット眼鏡の両方を買ってくださったり、ご家族やお友だちに紹介してくださる方も多いんですよ。

さらに、修理できるのもサステナブルなこだわりの一つ。ゆるくなったり壊れた時には修理ができて、使えなくなったら回収も可能です。お送りする際のパッケージにも工夫を重ね、緩衝材などのプラスチックなしで商品を傷つけずに送れるよう、リサイクル資材のメガネ袋で包み、説明書も宛名も100%古紙のダンボールの箱に印字して、必要最低限の資源でお届けしています。

リサイクル資材のメガネ袋

―最後に、今後の展望を教えてください。

2020年に構想・開発が始まり、2021年に会社を設立、試行錯誤を重ねて完成した商品を2022年10月に販売開始と、まだ短期間ではありますが、これまでの売り上げの一部を白内障手術の支援に充てることができました。
けれども、これはまだ始まりにすぎません。私が目指しているのは、世界の貧困による健康被害を防ぐこと。今後は、今の支援に加えて、インドで廃プラスチックでメガネを作って配ったり、現地の方の健康に役立つことも始めたいと考えています。そのためには、「eyeforthree」がさらにしっかり成長することが必要です。秋には新製品の発売を予定していますので、ぜひチェックしてみてくださいね。今後の「eyeforthree」にご期待ください!

・「eyeforthree」についてもっと詳しく知りたい方はこちら