「小さい文字が見えにくい」、「目が疲れやすくなった」、「夕方になると見えにくなる」etc.
身近に起こるこんな目のトラブル。「歳だから仕方ない」と放置しがちですが、“アイフレイル”が進行しはじめているサインかもしれません。
高齢化社会の日本で、国を挙げて取り組みが進められている“フレイル(虚弱)”は、加齢によって身体の機能が低下して健康障害に陥りやすい状態。健康と要介護の中間にあるその状態は、身体的、精神・心理的、社会的の3つに分類されますが、中でも今注目されているのが、身体的フレイルの1つ“アイフレイル”。大切な“見る”力が衰えていく“目の機能低下”という問題です。
フレイルの一種というと、高齢者特有にも思えますが、『加齢による眼の衰えに、様々な外的ストレスが加わることで目の機能が低下した状態』と定義されるアイフレイルは、実は40代から注意すべき身近な問題。「ただの老眼」とやりすごしている症状の中に、重大な病気の初期症状が潜んでいることも。気づかず放置して、将来見えにくくなってしまわないように、対処可能なこの時期に対処することが必要です。
そこで今回は、皆さんに知っていただきたいアイフレイルをクローズアップ。注意すべき症状や原因、どんなリスクがあるのかを、自己チェックリストと合わせてご紹介します。
<目次>
人によって程度の差はあれど、年齢とともに体力が衰えていくのは自然なこと。それは目も同じで、40歳を過ぎると加齢とともに、構造的にも機能的にも様々な面で衰えてきます。はじめのうちは自覚がなくても、見にくさや、すっきりしない不快な症状がだんだん増えていく。そのように目の機能が低下した状態が“アイフレイル”です。
ちょっとした見にくさや疲労感などの多くは、老眼など年齢的な変化によるものですが、一見老眼に思える症状の中に、重大な病気の初期症状が潜んでいることもあるのが怖いところ。
早期に発見できれば適切な治療や進行を抑えることができる一方で、放置して重度の機能障害に進むと回復が難しくなってしまいます。そんな“健康な目と視覚障害の狭間”にあるアイフレイルは、長年使ってきた目を見直すタイミングを知らせる注意信号。早期発見・早期治療のチャンスでもあるのです。
「40歳以上の人のためのアイフレイルガイド(日本眼科啓発会議)」より
アイフレイルの代表的な症状の一つ、老眼は、誰にも起こりうる目の老化現象です。加齢によって目の調節機能が低下することで、手元が見えにくくなったり、細かい文字が読みづらかったり、暗い場所で見えにくかったり。とても不便な状態ですが、老眼鏡などで矯正すれば見やすく快適に過ごせるようになります。
それなのに、「老眼鏡を使うと老眼がより進行する」などと、間違った思い込みを持つ方も多く、老眼鏡の使用を我慢する方もちらほら。見にくいまま無理をして見続けると、目に疲労がたまるばかりか、頭痛や肩こりなどにも繋がります。老眼鏡はもちろん、目の疲れを取るような目薬や、遠くや上を見ることでピントを動かす“目のストレッチ”を取り入れたりするのもおすすめです。
「40歳以上の人のためのアイフレイルガイド(日本眼科啓発会議)」より
さらに目の病気などで視機能低下が進行すると、ますます見にくい状態に。ぼやける、かすむ、視界が狭くなる、暗くなる。そんな見え方になると、つまずきやすくなったり、人の顔が分からず不安になったり、外出を控えるようになったりと、身体活動や社会活動に悪い影響を与えて自立機能を低下させてしまいます。また、認知機能にも影響することも知られています。

このように、アイフレイルは目だけではなく、健康寿命にも影響を及ぼす大きな問題。見過ごさないよう、正しく知って備えることが大切です。
では、そのように視機能が低下してしまう原因は、どんな病気なのでしょうか?
日本の視覚障害の原因となる病気の1位は緑内障です。ある調査では40歳以上の5%、70歳以上の10%が発症していると言われる緑内障は、目と脳をつなぐ視神経が傷ついて視野が欠けていくのが特徴で、手術を受けても、欠けてしまった視野は戻らないのが怖いところ。しかも自覚しにくく、検診などで診断されて初めて気づく方が多数。近年その患者数は増えています。
「40歳以上の人のためのアイフレイルガイド(日本眼科啓発会議)」より
厚生労働省令和5年患者調査 傷病分類編(傷病別年次推移表)より作成
そのほか、糖尿病による長期の高血糖によって視力が低下してしまう糖尿病網膜症や、瞳の奥にある黄斑部に血管ができることで歪んで見えたり、視野の真ん中が欠けて見える加齢黄斑変性、カメラのレンズに当たる水晶体が濁ることでぼやけたり、かすんで見えたりする白内障も大きな原因です。
これらの病気は症状や原因、発症する部位も様々ですが、共通しているのは、初期段階は自覚症状が現れにくいこと。発症しても気づかないまま10~20年もの時間をかけてじわじわと進行し、高齢になって見えにくく困った状態になってしまいます。
けれども、逆に考えれば、見えにくくなって困るのは高齢になってからでも、病気自体は40歳頃から始まっているということ。早く気づいて適切な治療を受ければ、将来目で困る事態を予防することも可能です。だからこそ、まだ早いとも思える40歳代からアイフレイル対策が必要なのです。
早期発見・早期治療には、視力をはじめ、眼圧や眼底なども検査してもらえる眼科検診が欠かせませんが、その前に自分で簡単にできるチェックリストを試してみませんか?
「40歳以上の人のためのアイフレイルガイド(日本眼科啓発会議)」より
このチェックリストは、当てはまる項目が多い場合は要注意。2つ以上の場合は、緑内障や白内障など、重大な目の病気リスクが2~3倍高いことがわかっています。
アイフレイルを分かりやすく解説した日本眼科啓発会議によるWEBサイト「40歳以上の人のためのアイフレイルガイド※1」では、この他、実際の見え方をチェックできるツールも紹介されています。ロート製薬が開発した、自宅で簡単に見え方をチェックできるアプリ「アイミルン」もあるので、ぜひお試しくださいね!
ただし、どのチェックもあくまでも目安。病気の初期段階では自覚症状がないことも多いので、健康な目を守るためには、眼科で定期的に検診を受けることが必要です。
人は外界からの情報の80%以上を目から取り入れています。目の健康は目だけの問題ではなく、健康寿命にも関わる重要な問題。人生100年時代と言われる今、長い人生を安全・快適に過ごすためにも、改めて今の自分の目を見つめ、アイフレイルに正しく向き合い、生涯にわたって良好な視機能を守りましょう。
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