“お客様起点のものづくり”を大切にしているロート製薬では、皆さんからご意見をいただく機会がよくあります。それらの声をもとに商品の開発や改良を続けてきましたが、OTC医薬品で初めてとなる、企画段階からお客様を巻き込んだ商品づくりにチャレンジしました。
きっかけは、猫の日(2020年2月22日)に、ロート製薬公式ツイッターに投稿した1枚の写真。試作した猫耳型キャップの目薬が、猫好きさんを中心に反響を呼び、みるみるうちに1万件を超えるリツイートを集めて、「ぜひ買いたい」という声が殺到したのです。そこで商品化を決定し、総投票数3万7千票にも及ぶ「猫耳目薬総選挙」にて猫ちゃんモデルを選出。試作品の投稿から約1年半かかり、2021年10月13日に猫耳目薬が発売となりました。
とはいえ、ここに至るまでは苦労や葛藤の連続。猫ちゃんを見つめ過ぎて熱を出したり、毛並みや模様の表現に悩んだり!? 今回は、そんな猫耳目薬発売までの舞台裏や開発秘話をプロジェクトメンバーが語ります!
<目次>
<プロジェクトメンバー紹介>
容器開発担当 ロートネーム:ハマー
商品企画担当 ロートネーム:おかりな
マーケティング担当 ロートネーム:にしまい
SNSプロモーション担当 ロートネーム:にえちゃん
―話題の猫耳目薬がついに発売ですね。
商品化を発表してから約8カ月。やっとお客様にお届けできるのが、本当にうれしいです!
思えば、「猫の日(2月22日)のSNS投稿用に何かできない?」という軽い雑談がはじまりでした。それで、看板商品の目薬のキャップを猫の形にしてみたんですが、それがこんなに話題の商品になるなんてね。
そういえば、数ある目薬の中で、どうして「Cキューブ」を選んだんですか?
このコロンとした卵型容器のかわいらしさと、キャップとボトルのバランスから、動物っぽく見えるかも?と思ったのがきっかけかな。
ちょうど3Dプリンターが導入されて、試しに耳をつけた「Cキューブ」のキャップを作ってみたら、我ながらいいデザインができてしまって(笑)。そこからイメージが広がって、ピンとした耳や垂れ耳など10種類近く作りました。
そのキャップに、当時の関係者たちが手塗りで色や模様をつけたんですよね。なんでも、塗料を買いに行ったお店で、プラモデルに詳しい店員さんに着色の仕方を教わって、真冬の自宅のベランダで色塗りしたって聞きました…。
その丁寧に手塗りしてくれたカラフルな猫耳キャップが思った以上にクオリティが高くて、商品化する際に僕を苦しめたんだけど(笑)。
ロート社内でもすごく好評で、「これはバズるね!」と言われる度に「ひょっとして商品化されるかも?!」と、うれしさ半分、「手塗りの猫耳キャップに負けない猫ちゃんの表現ができるのか?」という心配で、ドキドキ半分といった感じでした。
猫の集会🐱 pic.twitter.com/M8TfxKd23d
— ロート製薬公式アカウント (@eyecare_cp) February 22, 2020
※2020年2月22日のロート公式Twitterでの投稿。製品ではありません。
―実際にツイッターに投稿した反応はどうでしたか?
「販売していないんですか?」、「商品化待ってます」といった好意的なコメントが多く、ちょうど週末だったせいもあって、あっという間に1万リツイートを超えたんです。これには本当に驚きましたね。
―それですぐに商品化が決まったんですね。
すぐにというわけではなかったですね。いくらSNSで盛り上がっても、実際に買ってもらえるかは別の話なので、冷静に判断しないと。
さすがマーケティング担当(笑)!
今までアニメ作品とコラボすることはあったのですが、今回の猫はキャラクターではないので、人気を測るのが難しくて…。何度も検討を重ねたうえで、「やってみよう!」と決定しました。
想像以上にSNSの反響が大きかったのも決め手だよね。
そうですね。ただ、「Cキューブの猫型目薬が限定発売されました」だけでは面白くない。せっかくのSNSの盛り上がりをさらに引き上げていくには、何か新しい仕掛けが必要だと考えたんです。
―それで「猫耳目薬商品化プロジェクト」を立ち上げた?
はい。私たち4人がメンバーとなって共有していたのが、“一方的な発信で終わらせたくない”という思いです。今回の商品化のきっかけがSNSだったように、今は企業とお客様双方向のコミュニケーションが当たり前の時代ですよね。そんな中で新しいモノ・価値づくりに挑戦しようと考えた時、お客様と一緒に商品をつくる=共創マーケティングが頭に浮かびました。
「お客様と一緒に」となると、実際には難しいこともあるのですが、挑戦すること・楽しいことが好きな人が多いロート製薬の企業風土があったからこそ、前に進むことができたのだと思います。医薬品で共創マーケティングなんて、他にはないですからね。
―具体的にはどう進めたんですか?
実は商品化が決まっても、自分の中では「かわいい=購入につながるのか?」という疑問が残って、すっきりしなかったんです。そこで猫好きな人たちに意見を聞くと、「うちの猫に似ていたら買う」という声が多数。それならいろんな猫ちゃんで作ろうと、いくつもデザインを考えたら、今度は選べなくなってしまって(笑)。
そんな試行錯誤の末に「猫好きさんと一緒に決めたら、きっといいものが作れるはず」という思いにいたり、皆さんが参加できる選挙スタイルに決めたんです。
【商品化決定‼️】
— ロート製薬公式アカウント (@eyecare_cp) February 22, 2021
昨年 #猫の日「商品化してほしい💓」の声が沢山あった #猫耳目薬
フォロワーさんの熱いリプライにお応えし、ニャンと‼️商品化が実現🐱
悩める柄を決めるべく、目薬キャップになってくれるモデル猫も募集🐱
詳細は4月発表🐱お楽しみに✨#猫耳目薬総選挙https://t.co/N0YtmFaIs6 pic.twitter.com/Mu1ygINhDd
それで、初めて手作りの試作品を投稿した1年後の猫の日に、猫耳目薬の商品化と「モデル猫募集」を発表したら、すぐにモデルになりたいという猫ちゃんの応募が殺到!トータルで7,000件のエントリーがあったんですよ。
想像以上の応募総数に喜んだものの、そこから皆さんに選んでいただくファイナリストの8匹に絞るのが本当に大変でした!朝から晩までずーっと真剣に猫ちゃんの写真を見続けるうちに、熱が出てきちゃいましたよ(笑)。
―実際のところ、どうやって7,000匹から8匹に絞り込んだのですか?
社内でも広く意見を集めるなどし、色々なポイントから総合的に絞り込みました。この時なるべく猫種が重ならないように注意していたせいで、プロジェクトのメンバー全員が猫の種類に詳しくなったよね。
今だからこそ言えるけど、容器開発担当として「こんなタイプの猫はキャップにするのは難しいから…」と伝えていたのに、みんな全然聞いてくれてなかった(笑)。決まった8匹を見て、びっくりしました。
そうでしたっけ?(笑)
8匹での総選挙が始まってからは私たちは見守るだけでしたが、最終的には3万7千票もの投票をいただき、大接戦で3匹の猫ちゃんが決定しました!
わー!パチパチパチ(拍手)。でも、ここでホッとはしていられなかった!「決定しました」だけで終わると発売までの間に忘れられてしまうので、その期間をどうするかが次の課題に。せっかくここまで総選挙が盛り上がったのだから、その盛り上がりのまま、商品化を進める間も楽しんでもらうにはどうすればいいか悩みました。
そこで、“商品化の過程をすべてお見せする”ことにし、毎月ニャーニャーの日(22日)に進捗状況を報告したんです。その投稿にロート製薬の空気感が表れていたようで、「社員一丸となっている感じが好き」といったコメントや、「楽しみにしています」と励ましの声をたくさんいただいて。対話しながら作っているんだな、って実感がありましたよね。
(一同、深〜くうなずく)
#猫耳目薬通信 🐾Vol.2🐾
— ロート製薬公式アカウント (@eyecare_cp) June 22, 2021
猫耳目薬を多くのお客様に届けるために、肝となるのは工場での量産化🐈
生産チームが手腕を発揮し、特殊な猫耳キャップを目薬ボトルにはめるための部品を開発‼️いよいよ商品化の目処が立ってきた…✨
機密が多く隠しまくりですが、現場の熱い思いが伝わるといいニャ😻 pic.twitter.com/Y4nZg9Bfzj
―総選挙を行ったからこそ、新たな気づきがあったそうですね。
私たちはあくまで「どの猫ちゃんをモデルにしたキャップがいいのか」という容器デザインを決めるための選挙を行ったのですが、猫の優劣を決めるように感じて、不愉快に思う方がおられたことは大変申し訳なく思いました。
また、SNSにお寄せいただく声はすべて目を通していますが、その中に、野良猫・保護猫などの深刻な現実を教えてくださる方もいらっしゃいました。
そんな話を聞いて、この猫耳目薬を通して動物福祉に何か貢献できないかと社内で相談したところ、猫耳目薬の売り上げの1%を動物保護団体に寄付することが決まったんです。皆さんと一緒に作っているからこそ気づき、行動につなげられたことが、とても良かったと思います。
こうしてやっと商品化に進んだものの、スケジュールが本当に大変でした!お客様が思わず手にとってしまうようなデザインに仕上げるために、何度も作り直し。
それに加えて、医薬品の中でも特に管理状態が厳しい目薬ゆえの難しさにも悩まされましたね。
目薬って、人が触れることなく完成まで無菌状態で管理されるうえに、1分間に何百個レベルのスピードで製造されるんです。途中で耳が折れないように、印刷が剥がれないようにと品質を保たなければなりません。「これが目薬じゃなければ」と何度思ったことか(笑)。
さらに色柄にも苦労しました。例えば黒猫ちゃんのキャップは一見ただの黒に見えるかもしれませんが、実は4色も使っていて、よく見ると毛並みが表現されているんです。ここまで来るのに20以上は試作したかな。
ちなみに、「しみニャいタイプ」と「強いクールニャタイプ」は、猫の毛並みを再現するためマーブル調になっているのですが、まるで猫ちゃん1匹ずつの個性のように、容器のデザインも1つずつ柄の出方が違っているんです!そのため、“あなただけの1匹”を手にしていただけますよ。
(容器のベースとなる素材を多数検討しました)
(マーブル模様は1つずつデザインが異なります)
工場の方からも、「こんな難しいキャップ、本当に作るの?」なんて呆れられました(笑)。でも製造が始まると、とても丁寧に作ってくださって、完成したキャップを机に並べてこっそり楽しんでる人もいたんですよ。いろいろ大変でしたが、今思えば社内もお客様も一緒に盛り上がれたことは、すごく幸せなことですよね!
猫耳目薬を知って、面白いことができそうな会社だと就活生の認識が変わったり、お店のバイヤーさんから「いつ発売できるの?」と問い合わせがあったり。これほど期待される目薬になって、感謝の気持ちでいっぱいです。
容器開発&製造側としては、今回のプロジェクトは難しいこと・挑戦的なことも多くて大変でしたが、期待以上の商品が完成できてホッとしています。
猫耳目薬がこれほど話題になったのは、皆さんの声のおかげです。やっと商品をお届けできるのが本当にうれしいです。ぜひかわいがってくださいね!
皆さんの励ましの声があったからこそ、数々の苦労を乗り越え、ここまでたどり着くことができました。今後もお客様と一緒に商品を作ることができればいいなと考えています!
左より
ロートCキューブm (しみニャいタイプ)
第3類医薬品
ロートCキューブクール (クールニャタイプ)
第3類医薬品
ロートCキューブアイスクール (強いクールニャタイプ)
第3類医薬品