『みんなのQ&A』で募集した「これって更年期!?」と感じる身体や心の不調について、たくさんのコメントを寄せてくださりありがとうございました!
この不調はなぜ起こっているのだろう、いつまで続くのかしら…、誰かに分かってほしい!と不安に感じられることも多いですよね。そこで今回は、皆さまから多く寄せられた不調が更年期とどのような関係があるのか、更年期医療の第一人者である後山尚久先生に教えていただきました。
教えてくださったのは、
大阪医科薬科大学 健康科学クリニック 名誉所長
後山尚久 先生
大阪医科大学卒業、臨床研修後、島根大学医学部、米国オクラホマ州立大学に留学。1993年大阪医科大学産婦人科講師、助教授を経て2006年藍野学院短期大学教授。2009年大阪医科大学健康科学クリニック寄附講座教授、2016年同健康科学クリニック教授、2020年名誉所長、2022年大阪医科薬科大学功労教授。
そもそも“更年期”とは、閉経の前後5年の期間のことです。その期間は閉経に向かって女性ホルモンの量が急激に減ることにより、身体や心にさまざまな変化が起こります。例えば、身体がほてる、気分が落ち込んだりイライラする、という不調は更年期障害の象徴のように思われていますよね。確かに更年期によく現れる症状なのですが、別の原因でも生じる症状です。「きっと更年期だからまずは婦人科に…!」と思われて最初に婦人科に相談される方も多いですが、原因をきちんと検査できないと、実は婦人科でできることは少なく、回り道になる場合もあります。40~50代の頃に身体や心に不調を感じた時、更年期障害はその候補の一つと考えながらも、しっかりと原因を診察して対処することが大切です。
『みんなのQ&A』のコメントに多く寄せられた不調は更年期の症状なのでしょうか?また、辛いと感じる場合は、どの診療科を受診するのが良いのか、Q&Aの内容を参考にしていただき、ご自身の症状に合わせた対応を取ってくださいね。
体温調節が上手くいかないのは自律神経のバランスが崩れているからと考えられます。更年期はホルモンバランスが崩れることで自律神経に影響を与えるため、ほてりや発汗、冷えなどの不調が起こると言われています。緊張すると汗をかくなど、心の状態によっても自律神経は大きく影響を受けますし、甲状腺の働きが亢進している場合やうつや不安症などの場合も、ほてりや発汗、冷えなどの症状が多くみられます。もし、ほてりや発汗、冷えなどの不調が辛い場合は、まずは、あなたが風邪をひいた時などに行く『家庭医(かかりつけ医)』に相談してみると良いでしょう。これまでの病歴や血液検査などから様々な疾患の可能性を診断してくれますし、その他の疾患の可能性が否定できれば、更年期障害も可能性の一つとして婦人科で詳しく診ることができます。
不安感とうつ症状は、更年期障害で多い症状です。ですが、更年期だからとホルモンで治療するよりも抗うつ薬で治療する方が改善することがよく見られます。不安感やうつ症状が強い場合、心療内科か精神科を先に受診されるのが良いでしょう。もし、気持ちが安定していて生活や健康面の不安が無い方が、閉経から2~3ヶ月後に、急にホットフラッシュなどの症状があり、そのことに対する不安から心の不調が生じている場合は更年期障害の一つと考えられます。これはホルモンの変動が精神面に直接作用しているのではなく、ホルモン変動による体調変化によって二次的に引き起こされるものですね。
自律神経の乱れも疲れやすく感じる原因の一つですが、老化によるもの、環境変化によるものなど様々で、うつ病からきている場合も多いです。不調を感じ始めた半年から1年の間に、自律神経のバランスを乱す要因が何であったのかを探る必要がありますので、まずは、あなたを病歴や家庭環境などをよく診てきてくれた家庭医(かかりつけ医)の受診がおすすめです。このようにご自身のことを相談できる家庭医(かかりつけ医)を普段からみつけておくことも大事ですね。
めまいに悩まれる方は非常に多いです。自律神経の乱れだけでなく、メニエール病など他の病気が隠れている場合もありますので、一度は耳鼻科でしっかりと検査してもらうことをおすすめします。
特に50歳を過ぎると、男女問わず眠りは浅くなってきます。不眠に関しては、最初に更年期障害を考えずに、心療内科や精神科、特に睡眠外来があるところに相談すると良いでしょう。
更年期症状の一つとして血流が悪くなることによる場合もありますが、まずは整形外科、膠原病内科でしっかりと痛みやこわばりの原因を探らなければなりません。膠原病や慢性リウマチなどの疾患が隠れている場合があります。調べつくして何もなければ、更年期障害の一つと言えるでしょう。
自律神経失調症状の1つとして動悸もよくありますが、不整脈や甲状腺の病気の可能性も考えられます。人によって動悸の捉え方も様々なので、どういった時に症状が現れるのか、よく病歴を聞いて検査が必要です。心臓に関しては循環器内科に相談されるのが良いでしょう。
加齢に伴い女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が少なくなると、肌の水分量は減少し、乾燥から痒みを引き起こします。更年期の期間中だけでなく、閉経後、エストロゲンの分泌が増えることはないので、加齢現象の一つと捉えてうまく付き合っていかなければなりません。乾燥や痒みが辛い場合は、皮膚科に相談していただければ良い保湿剤を処方してもらえます。
エストロゲンの分泌が減ってくると、膀胱周辺の萎縮が起きたり、尿道が緩んだりします。そのため排尿に関するお悩みが出てきます。こちらも肌の乾燥と同様に、更年期だからというより、加齢現象の一つです。症状が辛い場合は泌尿器科に相談されるのが良いかと思います。
男性の場合、可能性として一番考えられるのはうつ病です。男性の50代前後は、社会的にも非常にストレスの多い時期で、そのことから自律神経のバランスを崩してしまうことはよくあります。そのような場合、放っておいても症状は良くなりません。もし、配偶者の方に元気がない、今まで楽しんでいたことにも興味が向かない、怒りっぽくなった、などの様子がありましたら、一度、医師に相談してみてください。お一人ではクリニックに行くことを後回しにする方も多いので、一緒に相談してみようと誘ってみてあげてください。
たくさんのお声をいただいたように、更年期に伴う不調は幅広く、またどの症状が強くでるかは人それぞれ千差万別です。そして更年期に差し掛かる年代は、ホルモンバランスの変化以外にも様々な原因で不調が出やすい時期です。症状が辛いと落ち込んでしまうこともあるかもしれませんが、身体や心がしんどい時は、ゆっくりと立ち止まり、自身の健康のこと、家庭のこと、仕事のこと、周りの人たちとのことを見つめ直す時間なのだと思って欲しいです。更年期は人生をリスタートさせるタイミングとして、これからの人生をどう生きていくのか、自分の身体と心と向き合いながら、自分を大切にするきっかけにしていきましょう。