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2022/11/24

【痔の基礎知識①】実は成人の約半数がかかる国民病!?意外と身近な“痔”の症状と原因

診断や調査方法によって異なるものの、日本の成人の半数以上が患っているともいわれるのが“痔(じ)”という病。実は国民病といわれるほど身近な病気です。それなのに、肛門というパーツゆえに、気づかないまま放置されたり、たとえ気づいても恥ずかしくて受診するのをためらってしまう人が多いようです。でも、一度発症すると自然に治ることはほとんどなく、放置するうちに悪化することも。いつか強い痛みに悩まされるかもしれません。痔の種類によっても異なりますが、早期なら市販薬で対処することも可能なので、できるだけ早く適切に対応することが大切です。
そこで、「もしかして!?」と心配な人はもちろん、今まで気にしていなかった人にも、もっと自分のおしりを気遣っていただくために、3回にわたって痔の基礎知識をクローズアップ。シリーズ1回目となる今回は、痔の症状や種類、原因のほか、痔になりやすい人など気になるポイントも解説しますので、最後までぜひご覧ください。
※諸説あります。

天藤製薬株式会社 寺田さん

教えてくださったのは、

天藤製薬株式会社 寺田さん

「痔にはボラギノール」でおなじみの天藤製薬でクリエイティブ ブランドマーケティングを担当。天藤製薬は、約100年前に痔疾用新薬第一号として痔の専門薬「ボラギノール」を販売して以来、一貫して痔を見つめ、大学や医療機関と連携しながら、商品とともに痔を正しく知るための情報も発信。2021年にロート製薬のグループ会社となりました。

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痛み・出血がなくても可能性あり!こんな症状は要注意

“痔”というと、「痛い」「おしりから血が出る」いうイメージを持つ人が多いと思いますが、それだけが症状ではありません。実は痔には様々な種類や段階があって、自覚症状がないタイプや、意外な症状を持つものもあります。例えば、こんなことに思い当たりませんか?

  • なんだかおしりがムズムズする。
  • 物を持ち上げようと屈んだ時に、おしりに痛みを感じた。
  • 痛みはないのにトイレットペーパーに血がついていた。
  • トイレの後でも、まだ便が残っている感じがする。

実はこれらも痔の症状の一つ。誰にでも起こりうる病気であるだけでなく、気づいていないうちにかかっていることもあるのです。

「そう言えば…」 「思い当たることがあるな」

そもそも“痔”ってどんな病気?3つのタイプを解説!

「誰にでも起こりうる」、「自覚症状がない場合もある」と聞いて心配になったら、まずは痔のことを正しく知ることから始めましょう。
痔は、実は正式名称ではなく、肛門の病気の総称。大きく分けて、いぼができる「いぼ痔(痔核)」、切れる「きれ痔(裂肛)」、膿が出る「痔ろう」の3つのタイプに分かれます。

1:いぼ痔(痔核)

痔の中で最も多い「いぼ痔(痔核)」は、肛門にいぼ状の腫れができた状態です。また、いぼのできる位置によって、さらに2つに分類され、歯状線よりも内側(奥)にできる「内痔核」と、外側にできる「外痔核」に分かれます。この歯状線というギザギザ状の部位は、粘膜(=直腸)と皮膚(=肛門)のまさに境目。それより内側には知覚神経がなく、外側には逆に知覚神経が多く通っているので、その線を挟んだどちらにできるかで、症状に大きな違いがあるのです。

知っておきたい2つの痔核

内痔核と外痔核のイメージ図

引用元:ボララボ おしり悩み研究所

【症状】

内側のいぼ痔(内痔核)の場合

  • 痛みなはい(少ない)
  • 排便時に出血する(潜血がポタポタ、またはシューッとほとばしる)
  • 肛門からいぼが出てくる

歯状線よりも内側=直腸粘膜にできたいぼ痔(内痔核)は、通常は痛みを感じません。そのため自覚がないケースも多く、排便時に出血して初めて気づいたり、大腸の内視鏡検査の際に発見される場合も。ポタポタと鮮血が流れたり、便器が真っ赤になるほど大量に出血することもありますが、ある段階を過ぎると出血はなくなり、排便時にいぼが肛門の外へ出てきます。また、炎症によって痛みを感じたり、かゆみや違和感を感じることもあります。

内側のいぼ痔(内痔核)は脱出の程度により、I度〜Ⅳ度に分類される

  • Ⅰ度

    初期の段階。いぼ(痔核)の脱出はなく、痛みもない。排便時に出血する程度。

  • Ⅱ度

    排便時にいぼ(痔核)が脱出するが、自然に戻る。

  • Ⅲ度

    脱出して、指で押し込まないと戻らない。

  • Ⅳ度

    指で押し込んでも戻らない。粘液が染み出すことも多い。痛み・出血もなくなる。かゆみや不快感が常にある。

引用元:ボララボ おしり悩み研究所

外側のいぼ痔(外痔核)の場合

  • 痛みがある
  • 大きくはれると激しく痛む

歯状線よりも外側=肛門の皮膚にできたいぼ痔(外痔核)は、多くの場合は痛みを感じます。また、急性の炎症を起こすと、血栓(血のかたまり)ができて大きく腫れ、激しく痛むこともあります。

【原因】

内痔核と外痔核は、どちらもできる原因は同じです。
歯状線のまわりには、静脈叢(じょうみゃくそう)という、毛細血管がたくさん集まったふくらんだ部分があります。そのふくらみ部分は肛門をぴったり閉じておくためのクッションのような役割を担っていることから、肛門クッションとも呼ばれています。便秘や下痢、硬い便などで排便に時間がかかったり、強くいきむと、肛門部分に負担がかかって血液循環が悪くなり、肛門クッションの血管がうっ血し、腫れ上がっていぼ状になってしまうのです。

2:きれ痔(裂肛)

比較的女性に多いきれ痔(裂肛)は、肛門が切れた状態です。知覚神経の多く通っている部分ゆえに痛みが強く、治りにくく悪化しやすいといわれています。

少量の出血と痛みが特徴

裂肛(きれ痔)のイメージ図

引用元:ボララボ おしり悩み研究所

【症状】

  • 排便時の強い痛み
  • 出血量は少ない

排便時に強い痛みがあります。出血は、通常はトイレットペーパーにつく程度で、それほど多くはありません。

【原因】

便秘の硬い便によって傷ついたり、下痢便が勢いよく通過することで負担がかかり、肛門が切れるのが原因です。排便時に強い痛みが起こるので排便を我慢するようになり、ますます便秘を引き起こし、硬くなった便が患部を傷つけるという悪循環が起こりやすいのも特徴。便秘が大きく関係しているのが、女性にきれ痔が多いといわれる一因です。

裂肛は悪化しやすい

引用元:ボララボ おしり悩み研究所

3:痔ろう

痔ろうは、細菌の感染により肛門の内部にあるくぼみに膿が溜まり、化膿して、肛門の内側と外側がトンネル状につながった状態のこと。穴痔(あなじ)ともよばれるこのタイプは、30~40代の方に多く、さらに比較的男性に多い痔のタイプです。

膿のトンネルができる痔ろう

裂肛(きれ痔)のイメージ図

引用元:ボララボ おしり悩み研究所

【症状】

  • 肛門の周囲がはれてズキズキとした痛みがある
  • 発熱(38〜39℃)がある
  • おしりが熱をもっている
  • おしりから、膿が出ている

通常は、痔ろう自体は痛みがなく、分泌物が出たり、しこりやかゆみを感じたりするのが症状です。ただ、痔ろうの前段階に起こる肛門周囲膿瘍(のうよう)という膿が溜まる病気は、化膿による高熱やズキズキとした痛みがあります。
また、痔ろうになって一旦痛みがなくなっても、膿の通り道ができてしまっているので化膿しやすく、再び肛門周囲膿瘍になって痛むこともあるようです。化膿が広がり悪化するので、患部を温めるのは厳禁。痔ろうはおしりを冷やすことが必要なのです。

【原因】

歯状線には、粘液を出す肛門腺につながる肛門陰窩(いんか)というくぼみがあります。このくぼみはとても小さく、通常は便が素通りするのですが、下痢をしていると便が入りやすく、大腸菌などの細菌が入り込むことがあります。その時、肛門腺に傷があったり、身体の抵抗力が弱っていたりすると感染を起こし、化膿して肛門周囲膿瘍を発症。さらに化膿が進行すると、肛門の外にまでトンネルのように深く広がり、最終的に皮膚へと貫通して膿が排出されるようになります。こうして膿が出ると症状は楽になりますが、肛門から皮膚へとつながった穴はふさがることはなく、その後も膿が出ることがあります。
痔ろうは市販薬で治すことはできないので、早めの受診が大切です。

痔になりやすい人ってどんな人?

痔というと、なんとなく男性に多い?と思われがちですが、特定の性別や年齢に限定されるものではありません。ただし、男女によってなりやすい痔のタイプは異なり、どちらもいぼ痔が一番多いものの、その次は、男性は痔ろう、女性はきれ痔が多いようです。

1960年~2004年社会保険中央総合病院(現在:東京山手メディカルセンター) ・大腸肛門病センター症例
※痔以外の病気を含みます。

引用元:ボララボ おしり悩み研究所

いずれにしても、痔は便秘や下痢などによって肛門に負担をかけることが大きな要因。便秘がち・下痢しがちな人は痔になりやすいといえそうですが、肛門に負担をかけるのは排便トラブルだけではありません。実はこんな人も要注意です。

座りっぱなし・立ちっぱなしが多い人

デスクワークや立ち仕事など、長時間座りっぱなし・立ちっぱなしなど、同じ姿勢を続けていると、肛門がうっ血しがちです。中でも座りっぱなしの姿勢は、うっ血しやすいだけでなく、ムレによって肛門周りの皮膚がダメージを受けやすいという側面も。ムレると、皮膚のバリア機能が低下して乾燥やかゆみを引き起こし、痔のリスクを高めることもあるので、ムレを防ぎ、血行を促すために、時々立って歩いたり、軽い体操をするのもオススメです。
また、排便時に長時間いきむのもNG。3~5分ほどしても出ない時は、無理せず切り上げるようにしましょう。

辛いものが好きな人

唐辛子やコショウなどの香辛料は、消化されずに排出されるので、排便時に肛門を刺激してしまうことがあります。おしりが心配な人や調子が悪い時は、辛いものは控え目に。

妊娠中の人

妊娠中は、大きくなった子宮で直腸や肛門部が圧迫され、うっ血して痔になりやすくなります。また、ホルモンの影響で便秘になりやすいことも一因といわれています。

このように、生活習慣病のようにも考えられる痔は、誰にとっても他人事ではありません。なにより早めの対策が大切なので、心配な症状があれば市販薬を試したり、痔ろうの疑いがある場合は受診が必須です。今は大丈夫という人も、痔の予防のために、肛門のうっ血を防ぎ、肛門周りの皮膚を健やかに保つようにライフスタイルを見直して、毎日の排便に関わる大切なおしりを、もっといたわってあげましょう。

・さらに詳しく知りたい方は「ボララボ-おしり悩み研究所- presented by ボラギノール」をご覧ください。

おしり悩み研究所 ボララボ