経験がないと他人事のように思われがちな“痔”は、性別や年齢を問わず誰もがかかりうる生活習慣病の一種です。しかも、自覚症状がない場合が多いうえ、一度発症すると自然に治ることはほとんどなく、放置するうちに悪化することもある厄介な存在。「ある日、突然出血して驚いた」なんてケースも少なくありません。
誰にも無縁ではないからこそ、知っておきたい【痔の基礎知識】をご紹介するシリーズの2回目は、痔にならないための予防法と、なってしまった時の対処法に注目。「これって痔なの?」、「どうなると受診が必要?」など、気になる質問にもお答えします!
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教えてくださったのは、
天藤製薬株式会社 寺田さん
「痔にはボラギノール」でおなじみの天藤製薬でクリエイティブ ブランドマーケティングを担当。天藤製薬は、約100年前に痔疾用新薬第一号として痔の専門薬「ボラギノール」を販売して以来、一貫して痔を見つめ、大学や医療機関と連携しながら、商品とともに痔を正しく知るための情報も発信。2021年にロート製薬のグループ会社となりました。
症状のつらさはもちろん、自分で患部が見えず確認しづらいことや、人に相談しにくいこともあって、痔になりたくないと思うのは誰もが同じ。予防するには、痔の大きな要因であるうっ血を防ぐことや肛門にできるだけ負担をかけないことが大切なのですが、そもそも2本の足で直立歩行する人間の構造自体が、肛門の位置が心臓より低いため、うっ血しやすいという困った現実。その上、何気ない日常生活の中にも痔の原因があれこれ潜んでいます。知らないうちに痔になってしまわないよう、日常に潜む原因を知って、生活習慣を見直しましょう。
きれ痔の人の64%に慢性便秘が見られたという海外のデータ※1もあるように、便秘は痔を引き起こす主な原因の一つ。排便に時間がかかったり強くいきむことで肛門部分がうっ血していぼ痔になったり、硬い便で肛門が傷ついてきれ痔になりがちです。
下記の要因を参考に、水分と食物繊維の摂取や、ストレス・運動不足の軽減を心がけて便秘を改善しましょう。
※1 Nzimbala,M.J.et al:Acta Chirurgica Belgica,109:720,2009.
●便秘を起こす要因
引用元:ボララボ おしり悩み研究所
下痢便は、便中の未消化物が肛門の皮膚を傷つけてきれ痔になったり、肛門の小さなくぼみに便が入り込み、細菌感染を起こして化膿性の炎症や肛門に膿のトンネルができる痔ろうの原因になることも。
症状が4週間以上続く慢性の下痢は、何らかの疾患が関わっている場合が多いものの、症状が2週間以内の急性の下痢は、9割以上が食中毒。ただし、一部には日常生活が原因※2となることもあるようなので、まずは暴飲・暴食やお腹の冷え、香辛料や脂っこいもの、アルコールなどの摂り過ぎ、精神的ストレスなどに心当たりがある人は見直しを。
※2 細田 誠弥:順天堂医学,50(4):330,2004
●水分補給はたっぷりと
おしりにとっては水分量約70~80%の便が理想的で、便秘の硬い便も下痢のゆるい便もNG。適度な軟らかさの便のためには適度な水分補給が必要です※3。一般的に、1日に必要な水分の目安は約2.5Lで、そのうち飲み水から摂取する目安は約1.2L程度※4。腸内の水分を保つために、1回につきコップ1杯(約200mL)の常温の水を、1日5~8回に分けてこまめに摂取することが推奨されています。
●トイレに長居は禁物!
排便時に長時間いきむと肛門に負担がかかり、うっ血や出血につながることも。3~5分ほどしても出ない時は、無理せず切り上げるようにしましょう。
※3 許斐 久子:東京高輪病院市民公開講座第14回「いいうんこ 気になるうんこ」,2018
※4 環境省:熱中症環境保健マニュアル2022,2022
長時間座りっぱなし・立ちっぱなしなど、同じ姿勢を続けていると、肛門周りの血流が悪くなりがちです。痔の発生や悪化につながらないよう、時々立って歩いたり、軽く体操するように心がけましょう。湯船につかる入浴も、おしりを温めて血流をよくするのに効果的。肛門を清潔に保つことにも役立ちます。
実は肛門周りの皮膚は、目の周りと同じくらい薄くてデリケートだといわれています。それなのに、その環境はとても過酷で、排便のたびに乾いたトイレットペーパーでゴシゴシ拭かれたり、強い水流で洗われたりして、皮膚表面にある皮脂膜がダメージを受け、皮膚のバリア機能が低下しがちです。また、座りっぱなしの姿勢で起こりがちなムレも、肛門周りの皮膚がダメージを受ける一因。水分が過剰な状態が続くと、皮膚の保湿成分が溶け出してしまい、結果的に乾燥に繋がり、痔のリスクを高めてしまいます。拭きすぎ・洗いすぎ・座りすぎに気を付けましょう。
痔を防ぐために、デリケートなのに過酷な環境下におかれているおしりを、できるだけ優しく守りたい。でも、排便後は温水シャワーでおしりを洗いたいし、しっかり拭きたい。座り仕事のデスクワークも避けられない。
そんな人にオススメしたいのが、皮膚を保護する膜をつくって肛門周りの皮膚を守る、新しいお手入れです。
販売名:ボラソフトプロテクトバーム 化粧品
「ボラソフトプロテクトバーム」は、おしりを優しく包み込んで、低下しがちなバリア機能をサポートする、D-パンテノール※5配合の油性バーム。肛門周りの皮膚の表面に保護膜を作ることで、水分蒸発を抑制するとともに、外部の異物や刺激から守ります。肛門と便の間に油の膜ができるため、便が直接肛門の皮膚に触れにくく、拭き取りやすくなるうえ、洗いすぎ・拭きすぎの軽減にも。健康なおしりを保つためにも取り入れたい、おしりのための新しいスキンケアです。
※5 皮膚補修成分
引用元:BORRAオンラインショップ
予兆もなく、ある日突然症状が現れることもある痔。急におしりが痛くなったり出血したりすると、驚き慌ててしまいますが、まずは落ち着くことが最優先。痛い!と身体が硬直すると、肛門に力が入ってますます痛みが激しくなりがちです。おしりをきれいにしてトイレから出たら、横になって安静にしましょう。膝を軽く曲げて横向きになり、全身の力を抜いて、おしりに力を入れないようにするのがコツです。
症状がひどい時はできるだけ早く受診することが必要ですが※6、軽めの症状には市販薬を使うのも効果的です。
※6 肛門周辺が熱を持ち、ズキズキと痛む肛門周辺膿瘍や、膿が出ている痔ろうは、市販薬では対処できないのですぐに受診してください。
痔の市販薬には、患部に直接使用する「外用薬」と、飲む「内服薬」があります。
いぼ痔やきれ痔の痛みやかゆみ、出血、炎症などをやわらげる外用薬には、痔の発生箇所や種類に合わせて選べる、さまざまな形状のものがあります。一般的には軟膏剤と坐剤が主流です。
そこでおすすめなのが、天藤製薬の「ボラギノール®A」シリーズ。こちらは、選び抜いた4種類の有効成分を配合。炎症をしずめるプレドニゾロン酢酸エステル、痛みやかゆみをしずめるリドカイン、傷の治りを助けるアラントイン、うっ血の改善を助けるビタミンE酢酸エステルが、痔による痛み・出血・はれ・かゆみにすぐれた効果を発揮します。
左から
販売名:ボラギノール®A注入軟膏 第2類医薬品
販売名:ボラギノール®A坐剤 第2類医薬品
販売名:ボラギノール®A軟膏 第2類医薬品
「ボラギノール®A」シリーズには、症状に合わせて選べる3つのタイプがラインナップ。どれもおしりへの優しさを考え、できるだけ刺激を与えず、傷ついた患部にきちんと薬剤が届けられるように設計されています。
・ボラギノール®Aシリーズについて詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
内服薬は、炎症をやわらげたり、血行を改善することで、身体の中から痔の症状を改善していきます。成分が全身にいきわたるため、効果は外用薬よりゆっくり現れます。
販売名:内服ボラギノール®EP 第2類医薬品
飲み薬で対処したい人に最適な「内服ボラギノール®EP」は、身体の中から痔の症状を改善していく内服薬。いきんだり、長時間同じ姿勢を続けることで悪くなりがちなおしりの血液循環と、痔に伴う炎症に着目した、3種類の生薬エキス配合の顆粒剤です。いぼ痔やきれ痔による痛み・出血・はれ・かゆみなどの症状を内側から改善します。
市販薬は軽度の症状に対する解消法や対処法です。外用薬を約10日間、内服薬を約1カ月間使用しても症状が良くならない場合は、病院を受診してください。
・内服ボラギノール®EPについて詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
知れば知るほど心配になる痔について、多くの人が気になる質問をまとめました。
Q.痔になる前兆はあるんですか?
A.痛みや出血はもちろん、カサカサする、かゆみを感じる、ムズムズするなど、少しでもおしりに違和感を感じたら注意が必要です。
そのほか、大きないぼ痔があると残便感を感じたり、排便後にジンジンする・腫れているといった症状は、痔が悪化する前兆ともいわれています。一旦良くなったように感じても、全体的に悪化していくこともあるので、おかしいと思ったら早めの対策をしてください。
Q.出血したけれど痛みはない。これって痔ですか?
A.きれ痔は出血も痛みもありますが、肛門の内側にできるいぼ痔(内痔核)は、出血することはあるものの、痛みを感じないことが多いのが特徴です。放っておくと知らない間に悪化することもあるので、早めに対処しましょう。
Q.筋力が衰えると痔になりやすいって本当ですか?
A.筋力が衰えると、便を排出する力が衰えることで排便に時間がかかりやすく、肛門部分に負担がかかりがちです。さらに、肛門をぴったり閉じておく組織がゆるむと、本来あるべき位置からずれ落ち、排便時に負荷がかかったり、うっ血しやすくなるため、痔になりやすいと考えられます。
Q.自覚症状があるのですが、どうなったら受診すべき?
A.おしりから膿が出る痔ろうは市販薬で治すことはできないので、すぐに受診してください。その他の痔も、痛みが激しかったり長引く場合は受診が必要です。
トイレットペーパーに多少つく程度の出血があるきれ痔や肛門の外側にできたいぼ痔(外痔核)、また、排便時にいぼが出てくるけれども自然に戻る程度の内側のいぼ痔(内痔核)は市販薬を試すのもおすすめですが、いぼが自然に戻らない場合は受診してください。
人間の身体の構造的にも、現代のライフスタイルから見ても、痔はいつなってもおかしくない病気です。その一方で、原因が分かっているからこそ、予防策を取りやすいという一面も。スムーズな排便を心がけると同時に、おしり周りのうっ血と肌荒れを防いで、健やかなおしりを守りましょう。