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2024/08/21

“筋肉の材料”だけじゃない! 美と健康のために摂りたい、たんぱく質

糖質、脂質とともに、三大栄養素と呼ばれるたんぱく質。“筋肉の材料”としてよく知られていますが、身体のあらゆる器官を作る材料であり、さまざまな身体の機能を調整する重要な働きもあります。あなたは、食事からたんぱく質をきちんと摂れていると感じていますか? 実は近年、日本人の一部が摂取不足だと言われています。美と健康に欠かせない栄養素であるたんぱく質のこと。前編、後編にわけてその情報をお届け。この前編では、たんぱく質が身体にどう必要なのか、不足によってどんなことが起こるのかをお伝えします。

たんぱく質には、“もっとも大切なもの”という意味が

プロテイン(Protein)というと、トレーニングの前後などに飲むプロテインドリンク(粉末プロテイン)を思い浮かべる人が多いようですが、実は、英語でたんぱく質を示す言葉。ギリシャ語のProteiosが語源で、“もっとも大切なもの”という意味があります。プロテインドリンクのイメージからか、筋肉を作る材料として知られていますが、脳、心臓、肺、胃、目、皮膚、髪、爪など、身体のあらゆる器官の材料となるほか、身体の機能を調整するという重要な働きもあります。

たんぱく質には、“もっとも大切なもの”という意味が

そんな大切な栄養素が、近年摂取不足にあると問題視されています。実に、戦後間もない1950年代と同じレベル! カロリーは十分でも、たんぱく質は不足という“栄養失調状態”の人が、意外にも多いのだそうです。
その理由は、太ることを気にして食べる量を減らしたり、肉を控えたりする人が増えたことが挙げられます。健康でありたいという思いが、結果たんぱく質の摂取不足を招くことになってしまっているようです。

たんぱく質には、“もっとも大切なもの”という意味が

コラーゲンやエラスチン。たんぱく質は美肌の材料!

たんぱく質が不足するとさまざまな悪影響がありますが、実は肌にも関係してきます。美容成分としてよく知られているコラーゲンが、作られにくくなるのです。コラーゲンは実はたんぱく質の一種。たんぱく質の摂取不足によって、肌のハリや弾力が低下してしまうことがあります。
コラーゲンは、皮膚の真皮層にフェンスのように張り巡らされていて、同じくたんぱく質の一種であるエラスチンが、コラーゲンをクリップのようにつなぎとめています。肌のハリや弾力は、それぞれコラーゲンとエラスチンが生み出しているのです。

コラーゲンやエラスチン。たんぱく質は美肌の材料!

フェンスのように張り巡らされたコラーゲンと、それをつなぎとめるクリップのようなエラスチン。
ハリをコラーゲン、弾力をエラスチンが生み出しています。

たんぱく質不足によって、肌の潤い成分として知られているヒアルロン酸も作られにくくなります。ヒアルロン酸はたんぱく質が材料になっているわけではありませんが、それを作り出すためには酵素が必要。この酵素がたんぱく質を材料としているのです。たんぱく質が十分でないと、ハリや弾力の低下だけでなく、シワやたるみまで引き起こす可能性があるということ。たんぱく質は、美肌に欠かせないものなのです。

カルシウムだけじゃない! コラーゲンは骨にも必要

コラーゲンは肌のほか、骨や軟骨にも存在しています。骨に必要なのはカルシウムでは? と思われるかもしれませんが、実は骨の約50%がコラーゲン。カルシウムとほぼ同じ割合で存在しているのです。肌と同様、コラーゲンはフェンス状に張り巡らされていて、カルシウムがそれをつなぎとめて衝撃を緩和するためのしなやかさを生み出しています。
コラーゲンの減少は、骨粗しょう症の原因のひとつとも言われています。美しい姿勢を保つことはもちろん、一生自分の足で歩けるアクティブな未来のためにも、たんぱく質は欠かせないものなのです。

カルシウムだけじゃない! コラーゲンは骨にも必要

鉄筋コンクリートに例えられる骨の構造。
外側のコンクリート部分がカルシウム、内側にある鉄筋がコラーゲンだと言えます。
その組み合わせで骨の強度を保っています。

髪の主成分、ケラチンもたんぱく質

髪が細く痩せる、爪のもろさなどもたんぱく質の不足が関係しているかもしれません。髪、爪の主成分であるケラチンもたんぱく質の一種。髪と爪の約90%がケラチンだと言われています。髪のハリやコシ、爪の硬さを維持するなどの役割があります。 外側からのケアも大切ですが、食事からたんぱく質をきちんと摂ることもまた、髪や爪のケアになります。

髪の主成分、ケラチンもたんぱく質

ほぼケラチンでできていると言える髪と爪。
美しさを保つために、
やはりたんぱく質摂取は必要!

ホルモン、酵素、抗体も、たんぱく質

身体のさまざまな器官の材料になるだけでなく、機能を備えたたんぱく質も多くあります。身体の機能を調整するホルモンや、消化や代謝をコントロールする酵素、ウイルスや細菌から身体を守る抗体も、たんぱく質です。たんぱく質は、生きていくためのほぼすべての機能を担っていると言えます。

ホルモン、酵素、抗体も、たんぱく質

美と健康を支え、生命維持にも欠かせないたんぱく質。太らないためにと食事を減らしたり、過度に肉を避けたりせず、必要な量を摂るようにしましょう。
あなたにはどれくらいたんぱく質が必要なのか、美と健康に効かせるためにはどう摂ればいいのか。後編でお伝えします!

\この先生にききました!/

上西一弘先生

上西一弘 先生
女子栄養大学 栄養学部 教授

うえにし・かずひろ●徳島大学 大学院 栄養学研究科 修士課程修了。食品関連企業で入院患者向けの流動食の開発に携わったのち、1991年より女子栄養大学に勤務。2006年より現職。著書に『栄養素の通になる』(女子栄養大学出版部)などがある。