美と健康を支えるだけでなく、生命維持にも不可欠な栄養素、たんぱく質。近年は不足傾向も問題視されていること、不足によってさまざまな悪影響があることを、前編の「“筋肉の材料”だけじゃない! 美と健康のために摂りたい、たんぱく質」で、お伝えしました。不足させないようにするにはどうすればいいのでしょうか。今回は、たんぱく質を多く含む食品や、効果的な摂り方などをお伝えしていきます。
<目次>
食事などから摂ったたんぱく質は、さまざまな器官や、ホルモン、酵素、抗体といった身体を調整する機能の材料として使われています。不足するとさまざまな悪影響がありますが、特に不調が現れやすいのは、肌や髪だと言えます。それは、たんぱく質が優先的に生命維持のために使われるため。不足した状態だと、肌のためにと思って摂ったたんぱく質も、コラーゲンドリンクも肌に届かず、生命維持のために使われることがあるのです。全身にたんぱく質を届けるためには、まず、自分に必要なたんぱく質の量を知っておくこと。1日の摂取量の目安は、一般的に体重1kgあたり1g。例えば、体重が50キログラムの人であれば、50g摂るとよいとされています。(※筋肉肥大を目指す場合は、体重1kgあたり2g、高齢者は1.2gなど目的や状態によって変わります)
肉類や魚介類、卵などが、たんぱく質を多く含む代表的な食品です。スポーツ選手や筋力トレーニングを習慣にしている人などは、筋肉の材料としてそれらの食品を積極的に摂っているようですが、実はそういった人たちの中にも、たんぱく質不足に陥っていることがあるそう。それは、その食品の重量分だけたんぱく質を摂れている、という誤解があるためです。例えば、牛肉のリブロース100g(脂身つき/焼き)なら、摂れるたんぱく質は20.4g。1日にそれだけ食べておけば十分というわけではありません。
また、同じ100gでも調理する前と調理した後、さらに調理方法によってもたんぱく質の量は違ってきます。以下に、主な食品のたんぱく質量をまとめてみました。あなたがよく食べている食品で、どれくらい摂れているのかを確認してみましょう。
先ほどお伝えしたように、体重1kgあたり1gがたんぱく質の1日の摂取目安になります。これを朝昼晩の三度の食事で、わけて摂るのが理想。体重50kgの人であれば、1度の食事で約17gの摂取が目安になります。なぜわけるかというと、たんぱく質は“食べだめ”ができないからです。身体で利用される量が決まっているため、一度に多く摂っても使われなかった分は排出されてしまいます。効率よく身体に効かせるためには、三食にわけて摂りましょう。さらに、意識しておきたいのは、朝食こそきちんと摂る、ということです。忙しい朝は簡単なもので済ませたり、欠食してしまったりする人も多いと思いますが、朝に摂れないと、身体の材料として使うたんぱく質を取り出すために、筋肉を分解してしまうことがあるからです。しかも、その状況が昼食を摂るまで続く、ということも! 朝に運動をする人や、部活動の朝練がある子どもには特に、筋肉のもとになる朝のたんぱく質は重要です。
また、朝にしっかり摂ることで、筋肉量を増やせることが期待できます。代謝が促進され、痩せやすい身体を目指せるというメリットもあります。朝食はトーストとコーヒーだけ、という人は、卵料理や乳製品などをプラスしてみましょう。
例えば、こんなメニューなら、たんぱく質を20.8g摂ることができます。
トースト(6枚切り食パン1枚)…5.3g
コーヒー(150ml)…0.3g
スクランブルエッグ(50g)…6.9g
ウインナー(1本)…2.6g
ヨーグルト(無糖70g)…2.5g
サラダ(50g)…0.6g
コーンスープ(カップ1杯・150g)…2.6g
出典:日本食品標準成分表(八訂)
※朝食メニューのイメージです
やはり、朝食の支度に時間をかけるのは難しい。そんな人には、プロテインドリンク(粉末プロテイン)をプラスする方法もあります。さまざまなプロテインドリンクがありますが、中にはメーカーが指定する量を摂れば10g程度のたんぱく質を摂れるものもあり、手軽に1日の摂取目安に近づけることができます。
プロテインドリンクには、大きくわけて、牛乳由来のホエイプロテイン、カゼインプロテイン、そして大豆由来のソイプロテインがあります。
ホエイプロテインは、筋肉肥大を促進するという特徴があり、スポーツをする人に人気。カゼインプロテインは、ゆっくりと吸収されるため、腹持ちがいいのが特徴。間食予防に役立ちます。ソイプロテインもカゼインと同じく吸収がゆっくりで腹持ちがいいのが特徴。ダイエット中の人にもおすすめです。
たんぱく質は不足しがち。そう聞くと、多く含んだ食品を摂りたくなるかもしれませんが、やはり偏ることなく、さまざまな食品を摂るように心がけましょう。同じ食品ばかり摂っていると、たんぱく質以外の栄養素が不足しやすくなるからです。ビタミンB₁、B₂、B₆などのビタミンB群は、たんぱく質をはじめ、糖質、脂質のエネルギー代謝に必要。かつおやまぐろ、鮭、豚肉、バナナなど、ビタミンB群を含んだ食品を摂るようにしましょう。
ビタミンDや、亜鉛・鉄などのミネラルは、たんぱく質の合成に重要。ビタミンDは、さんまや鮭、鰯、舞茸、ちりめんじゃこに、亜鉛は豚肉や牛肉、牡蠣、チーズなどに、鉄はレバーやあさり、小松菜、牡蠣、木綿豆腐などに含まれています。
美肌のためには、コラーゲンの合成を促すビタミンCも必要。キウイや、柑橘類のフルーツに多く含まれています。
やはり食事はバランスよく。ありきたりな言葉のようですが、昔から言われてきたその言葉には意味があるのです。
前編、後編にわけてお届けした、たんぱく質のこと。いかがでしたか? あなたの食生活にとり入れて、健康づくりに役立ててください!
\この先生にききました!/
上西一弘 先生
女子栄養大学 栄養学部 教授
うえにし・かずひろ●徳島大学 大学院 栄養学研究科 修士課程修了。食品関連企業で入院患者向けの流動食の開発に携わったのち、1991年より女子栄養大学に勤務。2006年より現職。著書に『栄養素の通になる』(女子栄養大学出版部)などがある。