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2025/02/12

今と未来の自分のために今日からできること。「フェムケアセミナー」レポート

ロート製薬は早くから女性の悩みに寄り添い、独自の技術や知見で女性ならではの健康問題の解決に取り組んできました。現在では世界的に多様性の認識が進み、社会的にも女性の体や心の問題についての理解が広まりつつありますが、一方で、女性自身が気付いていないことや分かっていないことも多々あるのが現状です。
そこで、自分で管理することや自分を守るための方法、正しいケア習慣を身に付けることの大切さを知っていただきたくてセミナーを企画。産婦人科の現役医師にご登壇いただき、「あなたに知ってほしい、今日からできること」をテーマにライフプラン講座を開催しました。
今すぐ取り入れたい体と心の取り組みや、性に関する権利、生理やおりもののお悩み相談など、幅広く身近なお話はぜひ皆さんにも知っていただきたいことばかりなので、ギュッとまとめてレポートします!

開催日時 2024年12月11日(水)18:30~

実施方法 オフライン

開催場所 ロート製薬 東京支社

講演してくださったのは、

東京産婦人科医会理事、宮益坂メリーレディースクリニック院長 長岡 美樹 医師

東京産婦人科医会理事、宮益坂メリーレディースクリニック院長
長岡 美樹 医師

産婦人科医としての長年の経験を生かして、心と体の両面から女性の健康をサポート。なんでも気軽に相談できる“保健室”をコンセプトに掲げる自身のクリニックで、すべての女性の婦人科デビューを応援中!
・宮益坂メリーレディースクリニックについて詳しく知りたい方はこちら

自分の体は自分のもの。女性が知っておきたい「SRHR」

今回のセミナーには、抽選で選ばれた約100名のココロートパーク会員の方々が参加されました。
長岡先生がはじめに教えてくださったのは「SRHR(Sexual Reproductive Health and Rights)」。
「性と生殖に関する健康と権利」を意味する言葉で、国際的な基本的人権の一つです。

「女性には、自分が思うように生きてほしいと思います。そのために知ってほしいのが「SRHR」です。」

どれも当たり前のことのように思えますが、その権利を使えていない人が実際は多いのだと先生は言います。
「我慢したり、自分がおかしいのかと悩む必要はありません。自分の体は自分のもの。自分の人生は自分のもの。自分の心や体の声を大切にして、幸せになってほしいと思います」。
そんな言葉に心強くなりました。

今の自分を知るための基礎知識 【からだ編】

では具体的に、今と未来の自分が幸せになるためには何に気をつけるべきか。
まずは“からだ”の基礎知識を教わりました。

「女性のからだの悩みで特に多い生理ですが、生理中のつらいお腹や腰の痛み、頭痛、吐き気だけでなく、学校や仕事に行きたくないという気持ちまで、すべて月経困難症と診断されることがあります。また、生理前のイライラや眠さ、むくみや過剰な食欲、なんとなく不調という状態は月経前症候群。どちらもれっきとした病気なので、お薬で管理できれば我慢する必要はありません」。

生理に振り回されるのではなく“管理”できれば、どれほど日々が楽になるでしょう!

「生理は“ライフデザインドラッグ”とも呼ばれるホルモン剤で管理することができます。今は薬も進歩していて、自分の体質に合った治療が受けられますよ。
ピル(ホルモン剤)で3カ月に1回程度に調整したり、必要な時まで生理をお休みするという手もありなんです。毎月卵子を育てて排卵するという負担のかかる大仕事を繰り返すことなく、卵巣を休養させておいて、妊娠したい時に頑張って働いてもらえばいいのです。生理でお悩みの人は、生活の質を上げるためにぜひ産婦人科に相談してくださいね」。

妊娠の話が出たところで、体重管理のお話も。現代の女性はやせ信仰が強いけれど、やせすぎは妊娠した時に赤ちゃんに悪影響を及ぼしたり、そもそも不妊につながる可能性もあるのだとか。もちろん肥満も、赤ちゃん・お母さん両方に悪影響が。そう聞いて、「妊娠したら体重管理を頑張らないと!」と思った人もいるかもしれませんが、なんと妊娠してからでは遅いのだそう。

「お母さんの体の健康は赤ちゃんの運命にも影響します。妊娠が分かった時点で赤ちゃんの心臓や神経はすでにつくられ始めていますし、どんどん育っていくから、妊娠に気付いてから体重管理をしても遅いんです。だからこそ、妊娠を考えている人は今から気を付けてください」。
この事実はショッキングだけれどとても大切なこと。妊娠を望むすべての女性に知っていただきたいですね。

今の自分を知るための基礎知識 【こころ編】

ほっと安心できるクリニックを目指す長岡先生は、体はもちろん、“こころ”にも常に気を配っておられます。
「現代は多くの人がストレスを抱えています。原因は人それぞれですが、気持ちに余裕がないからイライラするんですよね。寝不足だったり完璧主義だったり、そもそもやることが多すぎる場合もあるのですが、栄養不足もイライラの一因です」。
この慢性的なイライラは乱れた食生活のせいかも?!と驚きながらも、気になるのがイライラの解消法。ここでも先生は、具体的な方法を教えてくださいました。

「まずは寝不足や寝る前のスマホを避ける、朝起きたら日光を浴びることも大切。イライラしそうな時は深呼吸しましょう。しゃべったり笑ったり、好きなことをしないと、こころの余裕がなくなって鬱々しがちなので“こころの栄養”が大事です」。

「もう一つ注意したいのが栄養不足。イライラにはカルシウムが有名ですが、ビタミンやミネラル、タンパク質も必要です。心の安定や良い睡眠、やる気や元気のために必要なアミノ酸(たんぱく質のもと)は、人間は自分でつくれないので、食べ物からしか摂取できません。イライラしがちな人は、ここに挙げた食品を積極的に摂るように心掛けてくださいね」。

未来の自分のために知っておきたい大事なこと

次は未来のお話。“未来”というと妊娠・出産を想像するかもしれませんが、年齢を重ねた時のためにも大事なことです。
「体に悪影響を及ぼすことはたくさんありますが、特に気をつけたいのが、たばこ・飲酒・薬物の3つ」と先生は言います。
どれも妊娠を考える人には厳禁と分かりますが、たばこは美容の面から考えても迷惑なことばかり。肌のくすみやシワを悪化させてしまいます。

「逆に、積極的に取り入れたいのが、栄養・ワクチン・がん検診の3つです。
近年注目されている“新型栄養失調”とは、食べているのに必要な栄養素が足りていない状態です。例えば、朝食は食べず昼はコンビニ弁当、夜はお酒とおつまみだけ、なんて生活では、タンパク質やビタミン、ミネラルが不足するうえ、骨にも影響が出るんです。
骨折だけでなく“顔の骨粗鬆症”も心配です。歳をとると顔が小さくなり、肌が垂れ下がってシワシワになるのは、顔の骨が薄くなるのも一因。そうなってからでは手遅れで、骨の貯金は今から始めないと追いつきません。そのためにも、栄養をしっかり摂れるようにバランスのいい食事を心掛けてくださいね」。

ワクチンについては、特に若い人や妊娠を望む人に知ってほしいと長岡先生は言います。
「妊娠初期にお母さんが風疹にかかると赤ちゃんに障がいが出る可能性があるので、子どもの頃に風疹のワクチンを打っていない人は、ぜひ追加接種をしてください。各自治体で無料で追加接種を受けられるクーポンが発行されているので、住んでいる地域の自治体のHPを調べてください」。

子宮頸がんワクチンは、本来は中学生ぐらいで接種するものですが、打っていない人は、2007年生まれまでなら無料で打てるチャンスが。
「子宮頸がんは日本で毎日10人が亡くなっているといわれますが、予防することができます。ワクチンを接種すれば、子宮頸がんになるリスクを9割も減らすことができますし、がん検診はすべての方に大事なこと。若い世代だと自分には関係ないと考えがちですが、子宮頸がんは若い人がかかる可能性が大。子宮頸がん検診は20歳から始まります」。

「女性がかかるがんは乳がんが1位で子宮がんが5位。でも亡くなるのは、乳がんが4位で子宮がんはさらに少ないんです。これは、早く見つければ治る場合が多いということ。面倒がらずにがん検診を受けてくださいね」。

妊娠を望む人が心掛けるべきこととは?

妊活のお話もありました。
「女性は一生分の卵子を持って生まれてきて、その後卵子は年々減っていきます。一方、男性は精子を毎日つくって壊しての繰り返し。どちらも35歳を過ぎると妊娠しづらくなり、妊娠中のリスクも高くなります。一年間避妊していないのに妊娠しない場合は不妊ということになりますが、不妊の原因は女性も男性もどちらにもあります。女性が自分のせいだと決めつける必要はありません」。

今は体外受精も普及していて、10人に1人が体外受精で生まれているそうです。
「不妊治療の技術は年々進歩していますが、現実的には限界があります。だからこそ、自分が何歳で産みたいのか・何人産みたいのか、逆算して自分なりの予定やイメージを持ってほしいんです。産む・産まないは自由ですが、産みたいと思った時に産めるように、日頃から自分の体を大切に守ってください。自分の体も心も傷つけず、自分らしく楽しく生きてほしいと願っています」。

デリケートなお悩みもズバリ解決!

最後に、長岡先生が答えてくださる質問コーナーもありました。事前アンケートでは、おりものやデリケートゾーンのニオイについてのお悩みがたくさん寄せられましたので、その中からいくつかご紹介しますね。

Q. おりもののニオイが気になります。

A. 膣の中にはたくさんの菌(乳酸菌)がいます。体調がいい時や免疫がきちんと働いている時は、膣内が善玉菌で守られているので、酸っぱいニオイがするのは正常なんです。善玉菌が流れてしまうので、ニオイが気になるからと膣内までシャワーで洗うのは厳禁です。

Q. おりものの色が日によって違います。これって異常ですか?

A. おりものは生理周期で変わります。排卵の時期は透き通ったたまごの白身状、排卵の後は硬くてニオイのきついおりものになります。生理の終わり頃は残った血が混じって茶色っぽくなったり、排卵時に出血がつくこともありますが、どれも問題はありません。気になるのは、緑色になったりモコモコしている場合。感染症等の疾患が原因かもしれません。白くてかゆみもある場合はカンジダ膣炎かも。しれません。症状が強ければ婦人科を受診してください。

Q. デリケートゾーンのニオイやかゆみが気になります。

A. さまざまな原因があるので一概には言えませんが、洗いすぎには要注意です!デリケートゾーンは、体全体を洗って残った薄い泡で軽~く洗うだけで充分。ゴシゴシ洗うと傷ついてしまうし、清潔じゃないと思い込んで念入りに洗うと乾燥しがちです。
最近VIO脱毛が流行っていますが、デリケートゾーンの肌は、毛があることで下着やおりものシートなどから守られているので、丸裸にしてしまうとカサカサ擦れたり乾燥したりして、かゆくなることも。それなのにさらに念入りに洗って、乾燥してトラブルを起こす人が多いんです。デリケート部位用の洗浄剤など自分に合うものを試しながら、洗う時は“軽く優しく”を心掛けてくださいね。

女性の権利から始まり、つらい生理やストレスの解決法、正しい食事やがん検診まで。身近なことなのに今まで聞くことのなかったお話をたっぷり教わって、前向きな気持ちになれた参加者の方は多いはず。改めてもっと自分の体を大切にしようと思わせていただけました。
ロート製薬では今後もさまざまなイベントやセミナーを企画していますので、皆さんもぜひ参加してくださいね。

こちらもCHECK!

セミナー後に参加者の皆さんにアンケートをお願いしたところ、「もっと深く知りたい」「これも聞きたかった!」と質問が続々寄せられました。そこで今回、長岡先生に特別にお答えいただいたので、ぜひご覧ください。

Q. おりものの量の変化は体調の変化などで起きるのでしょうか?それとも年齢の変化によって起こるのでしょうか

A. おりものは、子孫を残すために大切な子宮を守る役割を担っています。一番大事な仕事は子宮に菌が入らないようにすることで、膣を弱酸性に保ち、雑菌と戦って外に捨ててきます。菌の種類や量によって性状が変わる特性があり、排卵の時期は、妊娠させるために精子の泳ぎやすい性状に変わります。ホルモンの動きも関係するため、もちろん年齢によっても変わります。

Q. 先生は、「生理がつらい時にはピルを飲む選択肢もあるけれど、副作用もあるから、痛み止めの薬でコントロールできるなら、そういう方法もある。痛みは我慢せず、市販の痛み止め薬を何錠飲んでも問題ない」と言われましたが、それについてもう少し先生の意見をおうかがいしたいです。

A. 説明がうまく伝わらなかったようですね。何錠飲んでもよいというのは、いくらでも飲んでよいということではありません。用法用量を守って服用して構いませんという意味です。まずは婦人科を受診されて、病気がないか確認してほしいですが、すぐに受診できない場合は我慢せず、市販薬も試してみてください。

Q. 子宮頸がん検診や性交渉が痛くて嫌なんです。検診で医師に相談したことがありますが、内膜症や膣の形状に問題はありませんでした。痛みなど人それぞれなのかもしれませんが、検診や性交渉の際、痛みをやわらげる対策はありますか?

A. 人は、分からないことに不安を強く感じます。膣の仕組みや痛みの出る理由について分かれば、緊張も解けて、痛みも軽減されると思います。内診を好きな人はいません。性交も好きな人ばかりではありません。何のためにどこを触られるのかを知れば、乗り越えられることもあると思います。まずは仕組みについて説明してもらうとよいかと思います。

Q. Iラインの脱毛をすると、乾燥してトラブルが起こりやすいというお話でしたが、洗い過ぎを防ぐ以外、保湿などは何をすればよいのでしょうか?

A. 特別なものを購入しなくて大丈夫です。普段お使いのボディーローションを塗るついでに、Iラインにも塗ってください。

Q. 葉酸のサプリメントを飲んでいます。ほかにも、美容ドリンクやプロテインを飲んでいるのですが、葉酸のサプリメントに入っている成分と重複しています。基本的にサプリメントには1日に必要な栄養素のMAX値が入っているようですが、摂りすぎに注意すべき成分があれば教えていただきたいです。

A. 日本人の1日あたりの葉酸摂取量の平均は240㎍/日です。妊活中は640㎍/日、妊婦は480㎍/日が必要だといわれています。サプリメントからの摂取上限量は1000㎍/日といわれていますから、多く摂ればよいというものではありません。サプリメントは信頼のおける製品に限ったほうがいいでしょう。食事で摂るのが基本であることをお忘れなく。