2008年に「美容皮膚科」がクリニックの標榜科名として認可されて15年、SNSで美容医療が話題になったり、街中でも美容クリニックを見かける機会が多くなったり、美容医療が身近に感じられるようになってきました。ですが、初めてだとちょっと怖い…、どんな施術があるの?どうやって選べばいいの?と、漠然とした不安をお持ちの方も少なくないと思います。そこで今回は、美容皮膚科医として多くの女性の悩みを診てきた「アオハルクリニック」の院長・小柳衣吏子先生に、美容皮膚科の王道施術から注目のトレンドまでを解説していただきました。
教えてくださったのは、
アオハルクリニック院長
小柳衣吏子 先生
アオハルクリニック院長。皮膚科専門医。順天堂大学医学部卒業後、都内の美容皮膚科で経験を積み、2011年アオハルクリニックの院長に就任、現在に至る。“いつまでもアオハル!(青春)”をスローガンに、多くの人々にとってより良い治療を提供するために日々努力している美容皮膚科のスペシャリスト。
著書:美肌の王道(日経BP社)。 この書籍では、美肌を実現するためのアドバイスや知識が紹介されています。
<目次>
シミやシワ、たるみ、毛穴などの肌の悩みを持つ方々が多く訪れます。これらの悩みは厳密には“疾患”ではないものの、肌の見た目は他人から受ける印象に大きな影響を与えます。自分を若々しく見せたい、美しいと思われたいという様々な願望がある中で、私が美容皮膚科医として大切に考えているポイントは“清潔感”です。美容皮膚科で提供する治療は一回で劇的に変化をもたらすよりも、美容施術とスキンケアを通じて肌を定期的にケアすることで、外見の印象を清潔で健康的に保ち、それが結果的に自然な若さを維持する手段だと考えています。マスク生活が徐々に終わりを迎えている今、改めてご自身の肌の印象を見直すのは良い機会かもしれません。
クリニックのウェブサイトを見ても、さまざまな種類の施術があり、難解に感じることがありますよね。今回は、肌の異なる層ごとに行われる施術について解説してみましょう。
肌の最も外側にあるのが角質層です。ここに対する代表的な施術として、ケミカルピーリング、イオン導入、超音波導入があります。ケミカルピーリングは、酸を用いたピーリング剤によって古い角質を取り除き、肌のターンオーバーを促進します。イオン導入や超音波導入は、美容成分を肌の内部に効果的に浸透させる施術方法です。これらを組み合わせることで、ニキビや肝斑、くすみ、毛穴の詰まり、肌のざらつきなどを改善することができます。
表皮は非常に薄い層で、厚さはわずか0.2㎜程度です。しかしこの部分には、過剰に生成されたメラニン色素が蓄積し、いわゆるシミとして現れます。表皮へのアプローチには、レーザー治療や光治療(フォトフェイシャル)があります。これらは最も一般的に耳にする治療方法かもしれません。
レーザー治療では、メラニン色素を含む細胞に反応する特定の波長のレーザーを照射し、シミを取り除きます。レーザーを照射する際には、皮膚が軽く弾かれるような痛みを感じることがありますが、照射時間はわずかです。レーザー照射後、シミは一時的にカサブタとなり、1~2週間ほどで自然に剥がれ落ちます。その後、周囲の肌色と調和するようになるまで、1~2か月程度かかります。
光治療(フォトフェイシャル)は、カメラのフラッシュのような広範な波長の光を照射する治療方法であり、メラニンの黒い色素だけでなく、ヘモグロビンの赤い色素にも反応します。そのため、シミやそばかす、くすみ、赤みを同時に改善する効果があります。
真皮は肌のハリや弾力をになうコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸が存在する層です。また、それらを生み出すのが線維芽細胞です。この層にアプローチする施術には、RF(高周波)の熱作用によりコラーゲンの引き締めと線維芽細胞から新しいコラーゲン・ヒアルロン酸生成を促す施術が多く用いられます。また極細の針を用いて、肌に微細な傷をつけることで肌の修復機能を高めるニードリング施術などもあります。水光注射やメソセラピーと呼ばれている治療です。
表皮~真皮が皮膚と呼ばれる部位であり、脂肪層はその皮膚の下に位置する層です。メスで切ったり、針を指したりせずにここまで到達できる施術には「超音波」があります。強力な超音波の振動エネルギーで熱を加えるHIFU(ハイフ:高密度焦点式超音波)という施術では、HIFUの焦点を脂肪層にすることで脂肪を減らしてフェイスラインをすっきりさせることができます。
筋膜(SMAS層)は、皮膚を支える土台となっている層で、この層のゆるみが肌のたるみの大きな要因となっています。先に紹介したHIFUは、熱エネルギーでゆるんだ筋膜をぎゅっと収縮し、リフトアップ効果をもたらします。以前は、たるみを本格的に改善するにはフェイスリフト手術が主流でしたが、画期的なHIFUの開発により、皮膚の奥の筋膜領域まで皮膚表面を傷つけずに安全にアプローチすることができるようになりました。
額や眉間、目じりなど表情によってシワができる部位がありますよね。長年の表情の癖によって、その表情をしていない時にも深く表情ジワが刻まれてしまっていることがあります。幸せな表情でできるなら、それも素敵なチャームポイントだと思いますが、眉間や額のシワなどは不機嫌な印象や悲しい印象を与えてしまいますよね。そのような場合には、筋肉の動きをコントロールするボトックス(ボツリヌス毒素製剤)を注射し、シワを治療することができます。
上記で解説した施術のように「コラーゲンを生み出す」治療は多いのですが、実はコラーゲンだけを増やしても肌は硬くなってしまう可能性があります。ヒアルロン酸やエラスチンも含め、バランス良く肌の再生力を高めることが理想です。そこで注目しているのが『幹細胞の培養上清液』です。これは細胞や組織を修復する力を持つ『幹細胞』を培養(増やす)する際に生じる上澄み液のことなのですが、この上澄み液にも新しい細胞を生み出す指令の信号(成長因子)がたくさん含まれているのです。クリニックではこの培養上清液を皮膚に注射する施術や、パックで肌に浸透させる施術を行っています。細胞本来が再生する際に出している信号が含まれているので、バランス良く肌の再生を促してくれると考えています。
(培養上清液 イメージ図)
確かに、クリニックでの施術だけでは肌が美しくなるわけではありません。日々のスキンケアと生活習慣も肌の健康に重要な要素です。クリニックでは、スキンケア指導として摩擦の少ない洗顔やしっかりとした保湿、UVケアの徹底などを丁寧にアドバイスしています。しかし、自己流の誤ったスキンケア方法を実践している方が多いのも事実です。正しいスキンケア方法を学ぶだけでも、将来の肌の状態は変わると思います。
また、シミの種類によっては、施術の前後でトラネキサム酸の内服やハイドロキノン美容液の使用によるメラニン生成の抑制など、ホームケアを行っていただく場合もあります。さらに、ニキビや毛穴、赤ら顔(酒さ)に対してはアゼライン酸クリームをおつかいいただくこともあります。ハイドロキノンやアゼライン酸は有用な成分ですが、使用方法や肌の状態に応じて適切に使用することが重要です。
クリニックでは、個々の患者さんの肌の状態やニーズに合わせて、正しいスキンケア方法や適切なホームケアをアドバイスしています。
美容医療に対する必要性や関心は人それぞれですが、私は皆さまに肌と身体の健康を目指していただきたいと考えています。肌や身体の健康は美容の基盤であり、健康であることが美しさを引き出す要素です。美しさを追求することは、健康を保つことにも繋がります。美容皮膚科では施術を受けなくても、診察してもらってお話しするだけでもスキンケア方法や肌知識についてアップデートできると思いますので、ぜひ上手く活用してみてください。
アオハルクリニック
住所
〒106-0032 東京都港区六本木 6-15-1 六本木ヒルズけやき坂テラス5F
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日比谷線「六本木駅 1A出口」徒歩5分
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