女性にとって秋冬は特に注意すべき季節。手足の冷えや肌の乾燥が気になるのはもちろん、体調を崩しやすくなる人も多いのではないでしょうか?特にこの時期はウイルス性の病気が流行りがち。何度も風邪を引いたり、なかなか病気が治らず長引いたりするなら、“免疫力”が下がっているのかもしれません。
実は、心身の健康を“気血水”のバランスでとらえる漢方医学では、秋冬は“気”が不足すると言われています。“気”が不足すると、病気の元が身体に入りやすくなる、つまり、免疫力が低下した状態になりやすいと考えられているのです。
そんな季節を健やかに乗り切るために、昔から利用されてきた食養生が薬膳です。難しそうに聞こえるかもしれませんが、意外と身近な食材で簡単に作れるんですよ。そこで今回は、秋冬を元気に過ごしていただくために、オススメの薬膳メニューをご紹介します!
漢方医学では、病気はその人の生活習慣や体質、気血水のバランスの乱れによって起こると考えられています。気血水とは、身体を支える3本の柱のようなもの。“気”は全身の機能を正常に保つエネルギー、“血”は血液とその機能、“水”は血液以外の体液とその機能を意味します。中でも“気”は生命力の源と言われますが、強ければ良いというものではなく、強すぎても弱すぎても不調の原因に。生命活動を健やかに維持するには、三要素がバランス良く、また滞りなく体内を循環することが重要です。
生命エネルギーともいえる重要な“気”ですが、漢方医学では、空気が乾燥し、朝晩や日ごとの寒暖差が激しい秋冬は、その“気”が不足すると考えられています。特に、身体の表面にあり、病気の元(ウイルスや細菌など)の侵入を防ぐ“衛気(えき)”という力が不足することで、風邪やインフルエンザに罹りやすくなると考えられるのです。
ちなみに、「病は気から」ということわざがありますが、ここでいう“気”とは、気持ちのことではなく、この漢方医学に基づいた考えの“気”のこと。“気”が不足したり滞ったりすることで病気になる、という意味なんです。
夏野菜は身体を冷やす、ネギは胃腸の調子を整えるなどと言われるように、食べ物には力があります。その力や種類は様々ですが、風邪やウイルス性の病気に罹りやすくなる秋冬に摂りたいのは“気”を高める食材。不足しがちな“気”を食べ物で補うことで、身体を守る力を高めましょう!
【秋冬にたっぷり摂りたい“気”を補う食材】
牛肉
牛肉と一緒に摂るなら、じゃがいもやねぎが◎。
“気”を補いながら、胃腸の働きも整えてくれます。
鯖
秋〜冬に脂がのる真鯖が美味。火を通さないしめ鯖は、
身体を温める大葉を一緒に摂りましょう。
さつまいも
スイーツ作りにぴったり。蒸して、身体を温める
力のある黒蜜をかけると、手軽なスイーツに。
かぼちゃ
薄く切ってソテーし、身体を温めるシナモンを
振りかけて。簡単薬膳スイーツの出来上がり!
これらの食材に併せて、臓器の働きを高める食材も一緒に摂るのがオススメです。
多くの動物が冬眠するように、秋冬は人も活動エネルギーを節約する傾向にあるので、臓器の働きも抑え気味。胃腸は“気”を生み出す大切な臓器なので、臓器の働きを高める食材を摂ることで、“気”の不足を防ぐことができるのです。
【臓器の働きを高めて“気”の不足を防ぐ】
舞茸
臓器の働きを高め、“気”を補う力があるうれしい食材。
“気”を補う米と合わせた炊き込みご飯が◎。
ブロッコリー
“気”を補う力のある牛肉と、臓器の働きを高める
ブロッコリーの炒めものがオススメ。
ダブルの働きで、秋にぴったりな薬膳に!
かぶ
おろしてすまし汁に入れる、すり流し汁がオススメ。
胃にもやさしいホッとするおいしさ。
ぶどう
身体を冷やすことも温めることもしない“平性”に分類。
身体に負担がないので、そのままデザートなどに。
教えてくれたのは
国際薬膳師、栄養士、野菜ソムリエの資格を持つ
溝間さおりさん
2005年に栄養士としてロート製薬の薬膳レストランに勤務。薬膳の魅力に引き込まれ、国際薬膳師の資格を取得。薬膳レシピの開発や調理、接客などに携わる。独立後は、「より多くの方に薬膳の魅力を知ってもらいたい!薬膳は難しくない!実は身近に薬膳はある!」ということを伝えるために活動中。
昔から医食同源と言われるように、東洋(漢方)医学では「命を育て、健康な身体をつくる根本として、病気を治す薬も食事も源は同じ」と考えられています。薬膳は、その考えに基づいて、不調を予防・改善できる力を持った食材を摂り入れ、健康へ導くための食養生の方法です。
今回は、身体を守る力を高めるお手軽薬膳レシピを公開。先ほどご紹介した“気”を補う食材や、臓器の働きを高める食材がたっぷり摂れますよ。
これ1品で主菜に。乾燥肌でお悩みの方にもオススメ!
免疫力を高めると同時に、乾燥対策にもなるメニューです。鮭は体を温め、山芋(長芋)やブロッコリーと共に免疫力を高めると言われます。また、蓮根や豆乳は体液を潤して、乾燥による空咳や乾燥肌を予防する働きも。
大気の乾燥や寒さにより、風邪などの感染症にかかりやすくなる秋冬の時期にぴったりです。
●材料(4人分)
鮭…4切
蓮根…200g
ブロッコリー…1/2株
パン粉…適量
塩・胡椒…各少々
<山芋ソース>
長芋…300g
豆乳(無調整)…180g
味噌…35g~
マヨネーズ…大さじ1
醤油…小さじ1~
●作り方
たった15分で本格薬膳の味!
臓器の働きを高め、“気”を補う力も持つ舞茸とブロッコリーを使ったおしゃれな副菜。焼いて仕上げるから、白和えに欠かせない豆腐の水切りが簡単なのもうれしいですね。バジルの香りにお箸が進むメニューです。
先にご紹介した「鮭と蓮根の山芋トロトログラタン」で余ったブロッコリーも使えますね。
●材料(4人分)
舞茸…1パック
エリンギ…1/2パック
ブロッコリー…1/3株
ベーコン…1枚
サラダ油…大さじ1
塩…2つまみ
胡椒…少々
酒…大さじ1
ドライバジル…少々
<和え衣>
木綿豆腐…200g
【A】
マヨネーズ…大さじ1
醤油…小さじ2
砂糖…小さじ1
白すり胡麻…大さじ1と1/2
おろし生姜※…1センチ(1g)
おろしにんにく※…1センチ(1g)
※どちらもチューブのもの
●作り方
今回ご紹介した2つの薬膳レシピは、スーパーなどで簡単に手に入る材料を使っているうえ、短時間でできる手軽さが魅力です。日常の食事に取り入れながら、免疫力アップを目指し、今年の秋冬を健やかにお過ごしくださいね。