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2019/11/06

髪が細く薄くなる!?女性にも起こる薄毛の理由と対策

“薄毛”というと、昔は男性特有と思われていましたが、最近では女性にも多い悩みの1つです。ただし、女性の薄毛は男性とは症状が違ううえ、原因も複雑で、効果的な改善策がはっきりしないという問題まであります。
今回は、そんな薄毛に悩む女性の多くが感じているという“髪が細く薄くなる”現象に注目!どうして細くなるのか、理由を探るとともに、薄毛防止のために日常生活で注意すべきポイントもご紹介します。

診断しにくい女性の薄毛の症状と原因

男性の薄毛は前頭部(生え際)が後退したり、頭頂部(頭のてっぺん)あたりが薄毛になり頭皮が見えてしまうような状態が一般的。これに対して女性では薄毛になる部分が異なり、前頭部より少し奥の部分から頭頂部の前あたりが薄毛になる場合が比較的多く、髪1本1本が細くなり、ハリやボリューム感が失われたり、全体的に本数が少なくなるのが特徴のようです。
ただ、女性は髪型や髪色が多種多様なこともあって、統一された基準がなく、薄毛かどうかの診断自体を難しくしています。そこで、脱毛症を研究されている杏林大学の大山学先生に、薄毛の症状と原因について伺いました。

大山学先生

この先生にききました!

杏林大学医学部 皮膚科学教室 教授
毛髪科学研究会 代表世話人
大山学先生

医学博士。1993年、慶應義塾大学医学部卒業。2002年に渡米、国立衛生研究所、国立がん研究所の皮膚科訪問研究員に。14年、慶應義塾大学医学部 皮膚科学教室准教授。15年より現職。専門分野は、脱毛症、自己免疫性疾患、再生医学、幹細胞生物学

原因が複雑な女性の薄毛。女性ホルモンだけが原因ではない!

「女性の薄毛は女性ホルモンが原因だと思われがちですが、それだけで説明できるほど簡単ではありません。男性の薄毛(男性型脱毛症)は、男性ホルモンの関与がわかっていますが、女性の場合は、いくつもの原因が重なっていたり、まったくわからないこともあるのです。ただ、どんな場合でも言えることは、“髪がしっかり成長しない”状態であるということ。これは男性の薄毛も同様です」

“髪がしっかり成長しない”とは、どういうことなのでしょう?理解するために、まずは髪が生える仕組みをお聞きしました。

髪が生える仕組み=毛周期を知れば、薄毛の要因が見えてくる!

「私たちが“髪”や“毛”と呼んでいるのは、頭皮の外に出ている毛幹のこと。この毛幹を作っているのは、毛包とよばれる毛根全体を取り巻く小器官です。その底の部分にある毛乳頭が、毛細血管から取り込んだ栄養を元に成長因子を作り、毛母細胞に送ります。すると毛母細胞が分裂し、細胞がどんどん増えることで毛幹=髪(毛)が伸びていくのです。
毛包は、髪を生み出し・育て・抜けて・また新たな毛を生み出して、というサイクルで自己再生を繰り返します。これが毛周期です。毛母細胞が盛んに増えて髪が伸びるのが成長期、その後、細胞分裂が停止して毛包の下半分がなくなっていくのが退行期、髪が抜けて次の毛包を作るまでが休止期と呼ばれています」

“髪がしっかり成長しない”のは、この毛周期に関係があるそうです。そこから考えられる3つの要因を教えていただきました。

薄毛の要因1 “毛包のミニチュア化”によって細い髪になる!

上記サイクルの成長期から休止期までは約5~6年と言われていますが、この期間が早まると、健康的な硬くて太い髪が作られなくなるそう。

「いつも5~6年かけてじっくり毛包を作っていたのが、例えば1年や半年など、短期間でのサイクルが繰り返されると、きちんと毛包が育たず、だんだん毛包自体が小さくなってしまいます。これを“毛包のミニチュア化”と言います。ミニチュア化された小さな毛包からは細い径の髪しか作られなくなります。また、休止期にある毛包が増えることで毛を入れない毛包も増えるようになり、薄くなってしまうのです」

では、どうして周期が早くなってしまうのでしょうか。

「男性型脱毛症は、男性ホルモン(テストステロン)が毛乳頭に働きかけることで、成長期が短くなることがわかっています。けれども女性型脱毛症は、男性ほどホルモンが関係しているかは正直わかっていません。女性ホルモンが関係している人もいれば、検査しても何も異常が見つからない人もいたり、女性でも男性ホルモンが多くなることで薄毛になる人もいたり…。原因を特定するのは難しいものの、女性にも“毛包のミニチュア化”が起こっているのが現実です」

薄毛の要因2 髪の元になる幹細胞へ、繰り返されるダメージが白髪の原因にも

原因が複雑な女性の薄毛には、幹細胞が関係していることがわかっているそうです。

「毛髪の元になる毛包幹細胞や毛髪に色をつける色素幹細胞は、以前は毛母細胞に存在すると思われていましたが、1990年に毛母細胞の少し上の膨らんだ部位(バルジ)の中に存在することがわかり、そこから様々なことが解明されてきました。
毛周期の休止期に毛包がだんだん短くなると、バルジと毛乳頭の距離が最も近づきます。すると、そこでシグナルが交わされ、バルジの中の毛包幹細胞が活性化。毛髪のもとになる細胞を生み出します。生み出された細胞は毛球部に移動し、あたらしい成長期の毛包を支える毛母細胞となることで、新たな成長期の毛髪が作られるのです」

「このように幹細胞は、髪を作る元となるとても大切な存在。その幹細胞がメージを受けると、硬く太い丈夫な髪を作ることができずに、薄毛や白髪になるのです。例えば、髪を抜くのを止められず薄毛になる抜毛症や、芸舞妓やバレエダンサーなど日常的に髪をぴっちり結い上げている人に多い、生え際が薄くなる牽引性脱毛症などがその代表的な症状。何度も髪を抜くことで毛周期が早まり、毛包幹細胞をたくさん使ってしまったり、日常的に負担をかけ続けることで、毛包幹細胞がなくなってしまうようです。強い力で抜いたり、引っ張ったりなど、繰り返し毛包にダメージを与えることも薄毛の原因の1つと考えられます」

薄毛の要因3 加齢によって、毛髪ではなく皮膚を作る細胞に変化する!?

もう1つ衝撃的な要因が。人間に限らず、多くの動物において、年齢を重ねるほど薄毛になりがちですが、そこには、驚くべき細胞変化が起こっているというのです。

「東京医科歯科大学の西村栄美教授の研究で、毛髪を作る細胞を生み出すはずの毛包幹細胞は、加齢に伴い、皮膚の細胞に変わってしまうことがわかりました。※1
もともと幹細胞は、細胞分裂する際に、自分と同じ幹細胞へ分裂することも、違う細胞になることもできるのが特徴。毛包幹細胞にも皮膚に変わる能力が潜んでいます。通常は毛髪を作っているのに、加齢とともに細胞を繋ぎ止めるコラーゲンの一種が減っていくと、毛包幹細胞はバルジの内壁(基底膜)にくっついていられず、皮膚になりたがるようなのです。すると毛包幹細胞は毛髪ではなく皮膚を作る細胞に変わり、やがてフケや垢となって脱落。だんだん毛包がミニチュア化して、生えてくる毛が細くなってしまいます」

※1 仕組みは違いますが、火傷など皮膚の損傷時にも、毛包幹細胞が皮膚の細胞になることがわかっています。

薄毛を防ぐために、食事や頭皮ケアは無駄じゃない!

生まれ持った幹細胞はそれ以上増えることはなく、しかも髪が生え変わる度に使われ、やがてなくなります。このことから考えても、加齢による薄毛は仕方のないことですが、改善方法がないわけではなさそうです。

「加齢によるものに限らず、薄毛防止のために、食事の改善やヘアケアするのは無駄ではないと思います。必ず毛が生えるとは言えませんが、少しは悩みが解消するかもしれません。
毛の材料はタンパク質ですが、女性はその摂取量が意外と不足しがち。補うことで薄毛が改善できる可能性もあります。また、湿疹やかぶれでも毛髪が抜けるので、頭皮を健やかに保つようにケアするのもいいでしょう。ヘアスタイルも重要で、きつく髪をひっぱり結ぶスタイルは要注意です。時々であれば問題はありませんが、日常的に続けているとダメージになります」

日々進歩する薄毛治療の最前線

今や男性だけでなく、女性をも悩ませる薄毛問題。細胞レベルで解明が進む現在では、幹細胞を使った再生医療にまで範囲が広がり、盛んに研究がおこなわれています。
「私自身もiPS細胞を使って、毛髪を作り出す元である毛包を再生する研究を続けています。今後は、毛包幹細胞が皮膚に変わらないように制御する方法や、毛周期の成長期の時間を長くする方法も見つかるかもしれませんね」

最近になって、発毛促進効果が認められた成分もあります。CMなどでよく目にするミノキシジルという成分がその1つ。

「実はミノキシジルは、偶然から生まれた成分です。もともとアメリカで高血圧を抑える薬として開発されましたが、試験段階で服用した多くの人に毛が生えることがわかったのです。その発毛の仕組みは明確にはわかっていませんが、一定の発毛促進効果が認められ、発毛剤の有効成分として使われるようになりました。ミノキシジル配合の発毛剤は男性用のイメージですが、女性用もあります。細胞を活性化する効果があるので、試してみる価値はあるでしょう」

最近、髪にボリュームやハリ感がなくなってきたと気になる方は、どの要因が当てはまるのかチェックし、食事や頭皮ケアなど、身近な生活を見直すのも1つの手です。それでも気になる場合は、皮膚科を受診したり、自分に合った発毛剤を探してみるのもいいかもしれません。まずは、本当に薄毛になっているのかを確認するためにも、髪の太さや密度がどう変化しているか、自分の髪や頭皮をきちんと観察することから始めてみましょう。

・出典元:太陽笑顔fufufu

4人のメンバーがいいね!と言ってます。
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