記事
2019/08/09

10代でも老眼になる?意外と知られていない老眼の症状と仕組みに迫る!

あなたは、老眼にどんなイメージを持っていますか?年齢を重ねると手元の小さな字が見づらくなる、老眼鏡をかけなければいけなくなる、というようなざっくりとしたイメージしか持っていないという人も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、老眼のメカニズムや症状という基本的な情報とともに、最近10代や20代の若い人の間にも増えている「スマホ老眼」についても、解説します。

梶田眼科 院長 梶田雅義先生

私が解説します!

梶田眼科 院長 梶田雅義先生

1983年、福島県立医科大学卒業後、カリフォルニア大学バークレー校研究員などを経て、2003年、梶田眼科開業。東京医科歯科大学医学部臨床教授、日本眼光学学会理事、日本コンタクトレンズ学会常任理事、日本眼鏡学会評議員などを務める。

老眼ってどんな状態?まずは老眼の症状を知ろう

基本的には、遠くが見える矯正状態にしたときに、手元が見づらいというのが老眼です。よく「近視の人は眼鏡を外したら近くが見えるから老眼ではない」といわれますが、これは誤解。近視の人でも、近くを見るのに眼鏡やコンタクトレンズを外す必要があるなら、それは立派な老眼なんです。

ただ、老眼の初期段階から、近くが見えづらくなるわけではありません。夕方頃、近くを長い間見た後に遠くを見ると、 遠くがかすんで見える。これが老眼の初期症状です。私はこれを「アフターファイブブラー(blur:ぼやけ)」とよんでいます。

なぜ夕方に起きるかというと、仕事中はずっと近くを見ていることが多く、近くにピントが合う状態で固まってしまっているため、朝出勤するときは遠くがよく見えていたのに、帰るときには遠くにピントが合いづらくなってかすんで見えるようになる、というわけです。

ほかにも、具体的な症状としては、目の疲れや乾き目があります。このあと詳しく説明しますが、近くにピントを合わせるのには毛様体筋(もうようたいきん)という筋肉が縮んで緊張状態になっています。近くにピントが合いにくくなってくるといつも以上に毛様体筋が頑張ってピントを合わせようとするので、疲れ目が起きます。そして、毛様体筋が緊張状態だと、涙は粘り気が減ってサラサラになり、すぐに流れてしまうため目が乾きやすくなります。

どうして老眼になるの?老眼の仕組み

老眼は加齢によって、誰にでも起こることです。
では、どのような仕組みで老眼になるのか、説明していきましょう。

目の中で、特に老眼に関わっているのは「水晶体」と「毛様体筋(もうようたいきん)」という器官です。ピントを合わせるために、毛様体筋は水晶体を引っ張ったり緩めたりしてコントロールしています。毛様体筋が縮んで緊張すると水晶体が厚くなって近くにピントが合うようになるのですが、加齢によって水晶体の弾力がなくなって硬くなると、毛様体筋が頑張って縮んでも水晶体が厚くならなくなってしまう。そうすると近くにピントが合わなくなるので、老眼の症状が出始めるということです。

また、目の老化や疲れは自律神経のアンバランスにも影響しているというのも大きなポイントです。

自律神経は交感神経と副交感神経の2種類があります。簡単に説明すると、交感神経は興奮・緊張しているとき、起きているときに働く神経で、副交感神経はリラックスしているとき、寝ているときに働く神経。

目のピント調節には自律神経が大きく関わっており、毛様体筋は、副交感神経の命令によって縮んで緊張します。近くにピントを合わせる(毛様体筋が縮んで緊張している)ときは、体をリラックスさせる副交感神経が働いているというわけです。

しかし、スマホやパソコンの画面を見ているときは、文章を読んだり画像を見たりしているので、リラックスしているとは言えませんよね。体は交感神経が優位になろうとしているのに、目では副交感神経が優位になろうとするというアンバランスな状態になっているんです。長時間スマホやパソコンを見ることで、このアンバランスな状態が続き、その結果、老眼の症状や目の疲れに加えて、頭痛や肩こりなど体全体の不調に影響することもあります。

悪い習慣が老眼の原因に!10代でも起こる「スマホ老眼」とは?

先述したように、老眼は加齢によって水晶体が硬くなり、毛様体筋が頑張って緊張しても水晶体が厚くならないことが原因です。しかし加齢以外にも、スマホやパソコンなどを長時間見るといった生活習慣によって老眼のような症状が出ることがあり、「スマホ老眼」と呼ばれています。

10代や20代でもピント調節の能力は40~50代レベルしかないという人が最近増えています。スマホ老眼にも2つの種類があるので、それぞれ説明していきましょう。

調節弛緩型のスマホ老眼

近視の人でも、スマホだけを見ているぶんには裸眼で済みますよね。そうやって眼鏡やコンタクトレンズを使用せずに近くばかり見ていると、目はピント合わせをしないので、水晶体が動かされません。その状態が何カ月も続いてしまうと水晶体の弾力性がなくなって、遠くを見るための眼鏡をかけると手元が見えなくなるという、老眼と全く同じような症状になってしまいます。
加齢による水晶体の硬化とは少し違う仕組みで、毛様体筋のピント調節機能を使わないことによる水晶体の硬化が、このタイプのスマホ老眼です。

調節緊張型のスマホ老眼

眼鏡やコンタクトレンズで遠くが見える状態にした目で近くを見ようとし続けると、毛様体筋が凝り固まって緊張したまま緩めなくなってしまい、水晶体も厚くなった状態のまま薄くなれないという状況になってしまいます。その結果、老眼と同じような状態になります。

どちらのスマホ老眼の場合も、手元が見えづらいという症状は同じです。ただ、緊張型の場合はすごく目が疲れますし、頭痛や肩こりが起こってきます。さらに、寝付けなくなるということも。これは先ほど説明した副交感神経の働きが背景にあります。

通常は交感神経が働いている起床時の状態から、副交感神経に切り替わるときに眠くなるので、このタイミングで寝ればよく眠ることができます。しかし、スマホなど近くを見ようと毛様体筋が頑張って緊張し続けている状態では、ずっと副交感神経が働いており、そのまま寝てしまうと寝つきが悪くなるのです。

若い年代のスマホ老眼の場合、正しい目の使い方をすれば、8割くらいの方は回復します。ずっとピントを動かさないことが目には良くないので、定期的にピントを手元から遠くに動かす「目のストレッチ」で毛様体筋・水晶体を動かすこともスマホ老眼対策になります。(詳しくはこちら

ピント合わせをスムーズにしてくれる効果がある、ネオスチグミンメチル硫酸塩の入っている目薬も有効です。ただ、残りの2割くらいは回復せず、20歳代で遠近両用の眼鏡を使わなければいけなくなるケースもあります。
若い年代の方で、老眼の症状を自覚したら、早めに眼科を受診することをオススメすすめします。

監修:梶田眼科 院長 梶田雅義先生
1983年、福島県立医科大学卒業後、カリフォルニア大学バークレー校研究員などを経て、2003年、梶田眼科開業。東京医科歯科大学医学部臨床教授、日本眼光学学会理事、日本コンタクトレンズ学会常任理事、日本眼鏡学会評議員などを務める。

関連記事
・早めの対策が吉!老眼とうまく付き合う5つの習慣
・もしかして老眼かも!? すぐできるセルフチェック&簡単対策法

4人のメンバーがいいね!と言ってます。
4人のメンバーがいいね!と言ってます。
この記事のタグ
  • #アイケア
  • #老眼