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2019/11/20

まつ毛トラブルに要注意!まつ毛と目の健康の意外な関係

マスカラをしたり、エクステをしたり、目力アップのメイクに欠かせない“まつ毛”。美しさを演出するだけではなく、ゴミやほこりから目を守り、風を遮って目の乾燥を防ぐ役割も担っている大切な存在です。目の健康にも美容にも重要なポイントとなるまつ毛ですが、きちんとケアできている方は少なく、近年は様々なトラブルが挙げられています。

実は、まつ毛トラブルには根本治療が難しいものが多く、未然に防ぐケアが重要視されています。今回は、伊藤医院副院長で眼科医の有田玲子先生に、まつ毛トラブルの原因や治療法、ケア方法、アイメイク時のポイントなどをお伺いしました。「最近まつ毛の数が減って、細くなってきた」という方も必見です!

教えてくれたのは

有田玲子先生

伊藤医院 副院長
眼科医 有田玲子先生

京都府立医科大学卒業後、京都府立医科大学大学院博士課程修了。慶應義塾大学眼科助手を経て、伊藤医院眼科副院長に就任。専門は、ドライアイ、マイボーム腺機能不全。丁寧な診察と的確な治療、分かりやすい説明で患者さんからの信頼も厚く、週末には講演活動を行うほか、新聞やテレビでも活躍。研究者としての業績も多くあり、高い評価を受けている。

眼科を訪れる患者さんに多く見られるまつ毛トラブルとは?

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もっとも多いのは「逆さまつ毛」ですね。睫毛乱生症(しょうもうらんせいしょう)とも言われ、1~2本のまつ毛が目の方向に向かって生えてしまい、角膜にあたってしまう状態です。また、主に下まぶたが内側に巻いてしまい、10~20本ものまつ毛が角膜にべっとりとくっついてしまう「内反症(ないはんしょう)」という病気もあります。

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▲左下睫毛乱生症(しょうもうらんせいしょう)

どちらも目のゴロゴロ感があり、目の角膜を傷つけたり、炎症を起こしたりする可能性があるため、そのまま放っておくのは危険です。

逆さまつ毛(睫毛乱生症)になってしまう原因とは?

20代ごろから症状が出ることが多いのですが、加齢による皮膚のたるみや眼輪筋(がんりんきん)の弛緩が原因と言われ、年齢を重ねるほど患者数は増加傾向にあります。また、コンタクトレンズの装着やアイメイク時にまぶたに触れる、アレルギーやアトピーでまぶたを擦るクセがついているなど、外的刺激も大きな要因のひとつ。洗顔のしすぎによる皮膚の乾燥、急性出血性結膜炎や流行性角結膜炎(はやり目)にかかった後なども要注意です。 このように、まつ毛の土台になっているまぶたの皮膚に何らかの負担がかかる状態が続いてしまうと、まつ毛に影響が出てしまうのです。

もうひとつの病気、内反症になってしまう原因とは?

内反症は、罹患する時期によって原因が異なります。赤ちゃんから3歳くらいまでに見られる内反症の原因は、先天性のもの。お年寄りに多く現れる内反症は後天性の原因によって起こります。
後天性の原因には、逆さまつ毛(睫毛乱生症)と同様に加齢によるまぶたのたるみがあります。上まぶたの皮膚がたれていくのですが、下まぶたの皮膚は粘膜に引っぱられて内側に巻いてしまうため、広範囲のまつ毛が目に当たることになってしまいます。また、ドライアイや目の周りの皮膚が乾燥して脂不足になってしまうことで、皮膚がつっぱって巻いてしまうこともあります。

逆さまつ毛(睫毛乱生症)と内反症の治療法とは?

メジャーな治療法は、専用のピンセットでまつ毛を抜くこと。まつ毛専用に作られているので痛みを伴わずに抜くことができますが、根本治療にはなりません。まつ毛が生えてくるとまた角膜に当たってしまうため、このためだけに病院に通っている患者さんもいらっしゃいます。自分で抜くのではなく、必ず眼科で診察してもらいましょう。

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逆さまつ毛(睫毛乱生症)の根本治療には、毛根を冷凍凝固したり焼灼したりして攻撃する方法や、毛根を取り除く手術があります。また、内反症にはまぶたの一部を切除して、巻かないようにする手術があります。これらは再発の可能性はなくなりますが、二度とまつ毛が生えてこなくなったり、まぶたが変形したり、目全体を覆う脂の分泌腺「マイボーム腺」といった目の大切な器官に悪影響を及ぼす可能性があるため、治療法は医師とよく相談して決めるとよいでしょう。
理想的な根本治療がないからこそ、病気を防ぐためにまつ毛や目元をしっかり整える毎日のケアが大切になります。

まつ毛トラブルを事前に防ぐケア方法とは?

まつ毛やまぶたも、考え方はお肌や頭皮と同じで、「乾燥させない」「血流を良くする」「清潔にする」の3つがケアのポイントになります。そこでおすすめしたいのは、温めて洗う方法。毎日、朝晩に行うと効果的です。

温罨法(おんあんぽう)

まずは蒸しタオルでじっくりと目の周りを温める、温罨法。皮膚にしっとりと汗をかくので乾燥対策になり、血流を促すことができます。まつ毛にはホコリや細菌、まつ毛ダニ(デモデックス)がこびりついているので、温めることで脂が溶けやすくなり、この後ご紹介する“洗うケア”で汚れが落ちやすくなったり、ゴシゴシ洗う必要がなくなって刺激を軽減したりするメリットもあります。

おすすめの温め方

  • ①タオルを水で濡らし、よく絞ってから電子レンジ(500w)で約30秒間温めます。
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  • ②少し冷ましてから横になってタオルをまぶたの上に乗せ、3分ほど目を温めます。
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※眼球を圧迫すると良くないため、手でまぶたに押しつけないようにしましょう。

※蒸しタオルは5分以上経過すると急激に温度が下がってしまうため、温かいうちに止めましょう。

リッドハイジーン

次に、リッドハイジーンと呼ばれる洗うケア。汚れの溜まりやすいまつ毛の根元を意識してマッサージするように洗うことで、まつ毛やまぶたを清潔に保ち、血流も良くなります。このとき、眼科や薬局などで扱っているまつ毛や目元専用のシャンプーを必ず使ってください。通常の洗顔料やクレンジングよりも目にやさしく作られていますし、泡タイプだと擦れを軽減してくれます。

おすすめの洗い方

  • ①メイクを落としたあと、顔が濡れた状態で使用します。
  • ②まつ毛専用シャンプーの泡を手にとって目を閉じ、上下のまぶたからまつ毛の根元にかけて、くるくると円を描くように指を動かしてやさしくマッサージします。
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  • ③目を閉じたまま、片手で少しまぶたをめくるイメージでまぶたを上に引っぱり、まつ毛の根元より少し内側を意識してやさしくマッサージします。
  • ④ぬるま湯でよく洗い流します。
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※眼球を圧迫すると良くないため、手でまぶたに押しつけないようにしましょう。

※蒸しタオルは5分以上経過すると急激に温度が下がってしまうため、温かいうちに止めましょう。

詳しく知りたいなら動画をチェック!

・温罨法(おんあんぽう)
https://www.youtube.com/watch?v=E5f2jInQUgM&feature=youtu.be

・リッドハイジーン
https://www.youtube.com/watch?v=klyg4AP7p_I&t=71s

最近、メディアで話題の「まつ毛ダニ」ってどんなもの?

まつ毛ダニはデモデックスとも呼ばれ、人の皮膚に寄生する「ニキビダニ」の仲間です。特にまつ毛の毛根に寄生して、毛根の脂をエサにしています。だいたい40代では約5割、70代になると約8割の方に寄生しているもので、上まぶたに1~2匹程度であれば害はありません。
しかし、まつ毛をケアせず不潔にしていたり、ステロイド軟膏薬を医師の指導よりも長く使い続けたりすると、肌荒れや乾燥を原因にして、その数が4匹以上に増えてしまうことに。そうすると、目のトラブルを引き起こすことがあるのです。

まつ毛ダニ(デモデックス)

まつ毛ダニはどんなトラブルを起こすの?

ものもらい(霧粒種/さんりゅうしゅ)やマイボーム腺機能不全の患者さんのまつ毛を調べると、まつ毛ダニが多かったという報告もあります。そのことからも、まつ毛ダニの増殖と病気の発症は関連があると考えられています。また、まつ毛ダニは頭をまつ毛の毛穴につっこんで脂を食べるため、毛穴がどんどん広がってしまい、まつ毛が抜けやすくなったり、細くなったりする原因にもなります。
まつ毛ダニは研究者や専門医も少ないうえに、通常の眼科診療とは違う検査が必要になるため、増殖していることには気付きにくいといえます。目の異物感や充血、病気の発症など自覚症状が出たときにはすでに増えてしまっている可能性があるため、先にご紹介した「温めて洗うケア」でまつ毛を清潔に保ち、まつ毛ダニの増殖を防ぐことが大切です。

ほかにも、まつ毛が不衛生になる原因はある?

目の周辺を触る機会が多いと不衛生になりがちなので、コンタクトレンズを使用している方、アイメイクをする方、目元を触るクセのある方は注意が必要。目元に触れる前には手を洗っておくことも習慣づけておきたいですね。
女性はメイクをすることが多いので、目元も意識してクレンジングや洗顔をしていると思いますが、油断は大敵。眼科の診察中に「マスカラが落としきれていないな」ということがよくあるのです。洗顔の流れで目元を洗うのではなく、しっかりと意識してまつ毛やその根元を洗わないと、気付かない汚れが蓄積してしまいます。

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アイメイクでのトラブルと対処法とは?

まつ毛の根元からすぐ内側には、古い涙を排出する「涙点」、涙の蒸発を抑制する脂分を分泌する「マイボーム腺」といった重要な器官があり、これらの周囲を清潔に保つことは、まつ毛と目の健康に深く関わってきます。
メイクをする際に気をつけていただきたいのは、まつ毛の根元を塗りつぶすアイラインのインラインメイク。開口部を塞いでしまう可能性がありますので、まつ毛よりも内側のメイクは避けることが望ましいです。

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また、まつ毛エクステやつけまつ毛は、接着剤にアレルギーを起こして皮膚が炎症を起こす可能性がありますし、エクステが取れてしまうことを懸念して目元をしっかり洗えていなかったことが不衛生につながります。

これらに注意しておけばアイメイクやマスカラ、エクステなどが直接害になることはありませんが、まつ毛の根元はメイク汚れが溜まりやすいところです。不衛生が続くとドライアイやマイボーム機能不全、ものもらいなどの眼病を発症するリスクが増えるため、いつも清潔なまつ毛を心がけましょう。

3人のメンバーがいいね!と言ってます。
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