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2020/03/25

「気づいてあげる」ことが大切!乳幼児の視力の成長のために、親が知っておきたいこと

子どもの目は乳幼児のときに劇的に成長します。一方で、見えにくさや痛みがあっても本人はまだ自覚しにくい時期なので、“保護者が気づいてサポートしてあげる”ことが大切です。子どもの目の成長のために知っておいてほしいことについてお伝えします。

森紀和子先生

教えてくれたのは

慶應義塾大学病院 眼科
森紀和子先生

眼科専門医。福島県立医科大学医学部卒業。長野県厚生連佐久総合病院での研修後、信州大学医学部眼科学教室に入局。眼科専門医取得。その後、子育ての傍ら近視研究を本格的に開始するため、慶應義塾大学院医学研究科博士課程に進学。現在に至る。

人の顔がわかるようになるのは生まれてから約1週間後。4~5カ月で色もわかるように

生まれたばかりの赤ちゃんの目は0.01くらいの視力しかなく、まだ十分に見えていません。目の前にあるもののシルエットがぼんやりと白黒でわかる状態から始まり、身体の成長とともに視力も発達していきます。

ひとりひとり発達のスピードには個人差がありますが、ものにピントが合うようになるのがだいたい生後1~2カ月くらい。生後2~3カ月くらいになると少しずつ色がわかるようになり、生後2~6カ月ほどで両眼で同時にものを見る(両眼視)ようになります。その後、立体的にものを見る(立体視)ための発達は2歳ごろまで続きます。

1~4歳で、ぐっと視力が発達!5歳くらいで視力1.0に近づく

さらに1~4歳で急速に視力が発達し、1.0の視力に近づくのが5歳前後。左右の目で見た情報を合わせて頭で理解できるようになるのは6~8歳くらいだといわれています。
急速に機能が発達するだけに、目の病気やケガをはじめとしたトラブルが起こったり、目の成長に良くない環境が続いたりすると、発達が妨げられ「弱視」になる可能性があるのがこの時期。トラブルから子どもを守り、目の成長をサポートできる環境で生活させてあげることが大切です。

※ 弱視とは:視力の発達が障害されておきた低視力。眼鏡をかけても視力が十分でない状態のこと。

遺伝や生活環境によって、3歳くらいから「近視」が始まる可能性も・・・

そもそも、ほとんどの赤ちゃんは軽い「遠視」の状態で生まれます。まだ眼球が小さく眼軸(眼球の奥行)の長さは17mmくらいですが、約1年で4mmくらい成長します。さらに3歳までに約1mm成長し、その後13歳までに1.4mm成長して24mmほどになります。同時に角膜や水晶体も成長することでピントが合う状態(正視)に近づいていきます。

近視の主な原因は、眼軸が伸び過ぎてしまうこと。遺伝と生活環境の両面が影響していると考えられていて、3歳くらいから近視が始まるケースもあります。また、生まれつき近視の子どもや、遠視のまま成長する子どもも少なからずいます。年齢に応じた成長をしているかどうか、保護者が気をつけて見守ってあげてください。

そして、“視力”というと眼球の機能や成長のことに意識が向きがちですが、私たちは、見たものが脳に伝わって初めて「見えている」と感じます。目の成長と身体、脳の成長とのバランスがとても重要です。

視力の成長をサポートするために、今日から気をつけたいこと

目と脳と身体の発達のために、子どもがなにかに興味を持ったら、それを見せるだけでなく、積極的に触らせてあげましょう。視覚だけでなく五感を使うようにサポートすることで、目と脳と身体の連携がしやすくなります。とくにおすすめなのは“屋外で遊ぶ”こと。自然界にあるさまざまな刺激に触れることで、子どもの健やかな発達を促せます。

また、もし不調が見つかっても、目の成長期だからこそできる対策もあります。子どもの視力の成長をサポートするために、気をつけたいポイントをご紹介します。

1歳まで

しっかりと様子を見守ってあげることが一番のサポートです。月齢に応じた成長がみられない場合や、次の項目で思い当たる点があれば、小児科や眼科を受診してください。

≪要注意サイン≫

  • □ 瞳の色が気になる、黄色く光っているように見える
  • □ 目つきに違和感がある
  • □ 左右の黒目の位置に違和感がある
  • □ 目がしっかりと開いていないように見える(眼瞼下垂がある)
  • □ あやしても笑わない
  • □ 動くものを目で追わない
  • □ どちらかの目だけ隠すといやがる
  • □ 目の大きさに左右差があるように見える

1~6歳

この年齢の子どもは「自分の目で遊ぶ」ことがあります。パチパチと頻繁にまばたきしたり、片目をつぶってみたり、目をたたいてみたり。その行動が遊びであれば問題ありませんが、見えにくさを感じている様子があれば、できるだけ早く眼科を受診してください。
「1歳まで」の要注意サインに加えて、次の項目で思い当たるものがある場合も、受診をおすすめします。

≪要注意サイン≫

  • □ 字やものの形を覚えにくい
  • □ 長時間集中できない
  • □ 目を細めたり、近づいてものを見たりする
  • □ 頭を傾けたり、横目で見たりする
  • □ 目をたたいたり押したりこすったりする
  • □ まぶしがる
  • □ 暗いところを極端にいやがる
  • □ 視線が合わなかったり、どこを見ているかわからなかったりするときがある

こんなときどうすればいい? 乳幼児の目の不調の対処法Q&A

子どもの目の不調には病気が隠れている可能性があるので、まわりの大人が「まぁ大丈夫だろう」と判断せず、眼科を受診するのが基本です。

Q1. 子どもの目に小さなゴミが入ったときは、どうしたら良い?

まずできる対処は、人工涙液タイプの目薬をさしゴミを洗い流す方法です。他にも、水で洗い流す、まぶたをひっくり返してぬらした綿棒やガーゼなどでそっとふき取る、という方法もあります。その後も涙や痛みが止まらない様子だったり、目が開けにくそうだったり、目やにが多く出たりする場合は、必ず眼科を受診してください。

Q2. 子どもが、目がかゆくてかいてしまうときは?

子どもが目をこするときは、かゆみを感じているケースと、見え方に違和感があるケースがあるので、まずは原因を知る必要があります。また、頻繁に目をこするようであれば、さかさまつげや結膜炎、角膜炎、鼻涙管閉塞(びるいかんへいそく)などの病気が隠れている可能性もありますので眼科を受診してください。

Q3. 子どもの目が赤いときは?

白目が充血している場合は、結膜炎などの病気の可能性があります。結膜炎の中には流行性角結膜炎(はやりめ)のようにウイルス性の感染力が強いものもあり、その場合は保育園や幼稚園への登園が禁止になります。子どもの目が充血していたら、家庭内でも衣服やタオルを共有することは避けてください。

Q4. 子どもの目やにが多いときは?

病気が原因で出ている目やには、感染力が強いものがあります。素手で触れることは避け、水でぬらしたティッシュペーパーやガーゼなどで目尻から目頭に向かって(目のまわりに拡大しないように)ふき取ります。反対側の目にうつる可能性もあるので、ティッシュペーパーやガーゼの使いまわしは厳禁です。目やにの量が増える、いつもと色が違うなどの場合には何らかの病気が原因の場合があります。自己判断せず眼科を受診しましょう。

Q5. スマホやタブレットを使うときに、親が気をつけてあげられることはある?

子どもがスマホやタブレットを使うときは、時間を決めて、保護者が隣で見守りながら、画面との距離が近過ぎないように気をつけてあげるのがいいですね。できれば、子どもとコミュニケーションをとりつつ、一緒にコンテンツを楽しみましょう。スマホやタブレットを見たあとは、適度に休憩をとることも大切です。そして、“スマホやタブレットを見ている時間と同じくらい、屋外に出て、子どもの五感を養う”ことを意識してみてください。

乳幼児は目の不調や不快感などを、うまく伝えることができません。だからこそ、保護者がしっかりと子どもを見守り、違和感に気づくことが重要です。ぜひ今日から、これまで以上に子どもの様子を意識したり、“子どもと目を合わせてコミュニケーションをとる”ことを心がけたりしてくださいね!

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