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2020/02/25

フードロスを減らそう!様々な視点で深く“食”を学ぶ場『スローフードアカデミー』

2018年の国連WFP※1の報告によると、世界の全人口約76億人の中の約8億2100万人、つまり9人に1人が飢えに苦しめられているそうです。その一方、先進国では毎年40億tもの食料が作られ、その1/3に当たる13億tあまりが捨てられている現実も…。途上国では食料が足りず、欲しくても手に入れられないのに、先進国では大量に作られ、大量に捨てられている。そんな食の不均衡を改善しようと、世界中で様々な動きが始まっています。 「おいしい、きれい、ただしい(Good, Clean, Fair)食べ物をすべての人が享受できるように」という考えのもと、イタリアから広まった草の根運動「スローフード」もその一つ。そして、その理念に賛同したロート製薬は、食を様々な視点から学ぶ場を発足しました。今回は、その取り組みである「ロート スローフードアカデミー」についてご紹介します。

※1 国連WFPとは、国連機関であるWFP国連世界食糧計画(WFP)と、それを支援する認定NPO法人である国連WFP協会の二団体の総称。

「薬に頼らない製薬会社」であるために「食」にこだわる

ロート製薬は薬をつくる会社ですが、「薬に頼らない製薬会社」を目指しています。薬は病気や怪我を治し、健康へ導く大切なものですが、「本当の健康は薬が必要でなくなること」だと思うのです。そのためにまず見直すべきは、健康をつくる源であり、病気の予防にも重要な「食」。多くの人にいろいろな提案ができるよう、製薬会社の枠を超えて、食からはじまる真の健康に挑戦しています。
例えば、石垣島の自然を生かし循環型農業を目指す「やえやまファーム」の安心安全な食材づくりや、運営するレストラン「旬穀旬菜」での薬膳・栄養学の考えを生かした健康メニューの提供、旬の果実をふんだんに使ったフローズンフルーツバー「PALETAS」の販売などがあります。これらはロートが取り組む食事業ですが、食を届けるだけでなく、食を取り巻く現状を正しく理解し、その知識を活用できる人材をまずは社内から増やしていこうという想いもあり、より深く食を学ぶ場となる「ロート スローフードアカデミー」が誕生しました。

健康のみなもとをつくるファーム&レストラン

健康のみなもとをつくるファーム&レストラン

素材の良さを生かしたこだわりフード

素材の良さを生かしたこだわりフード

「スローフード」運動から食の現状を知る

2017年に立ち上げられた「ロート スローフードアカデミー」(以下、アカデミー)は、世界や地球、環境といった広い視点で食を学ぶ社員や、食に関する深い知見を持つ社員を増やすことで、ロート製薬の食事業を発展させることを目指して誕生した社内アカデミーです。1989年にイタリアで発祥した、食とそれを取り巻くシステムをより良いものにするという「スローフード」の考え方に共感し、「日本スローフード協会」に協力を得て、様々な角度から今の食の現状や課題を勉強しました。

「スローフード」運動から食の現状を知る

「スローフード」運動から食の現状を知る

食をめぐる問題点とその解決策を考える

生産者や料理人など食に深く関わる方にお話を聞いたり、持続可能な食への取り組みを行う現場を訪れたりといった活動で、現状を目の当たりにすると、反省することや考えさせられることがたくさんあります。中でも、本来は食べられるのに廃棄されてしまう「フードロス」は深刻です。生産から流通、販売、消費まで、全ての段階において原因が潜んでいる複雑で難しい問題ですが、私たちロート社員は、まずは多くの人に知ってもらう・関心を持ってもらうこと、そして消費者一人ひとりの意識を変えるきっかけを作ることが大切だと考えています。

身近に感じることで、楽しみながら問題を実感

今、世界中で行われている「ディスコスープ」をご存じでしょうか?これはフードロスの問題を多くの人に楽しく知ってもらうためのきっかけを作る取り組みで、通常は廃棄されてしまう形が悪かったり傷がある野菜類を使ってスープを作り、ディスコパーティに見立てて楽しく食べるイベントです。以前、アカデミー生主体で開催したことがあり、石垣島の「やえやまファーム」で作られたパイナップルや、神戸でフードロス活動をしている「タベモノガタリ」さんが取り引きしている農家さんの桃や梨をコンポートにして、スープではなくアイスティーで提供したことも。その際、関西で環境負荷の小さな農業の普及を目指して活動しておられる「坂ノ途中」さんに、“なぜ規格外野菜ができるのか”といった、作り手の方だからこそわかる貴重なお話も伺いました。
他にも、「コープこうべ」さんの店舗の一部を借りて、コープの組合員の方々と一緒にフードロスを考えるイベントを行ったり、関連施設を訪問したりと、様々な角度から問題を見つめ直し、勉強しています。

広報担当 ロートネーム:みさみさ

語ってくれたのは

広報・CSV推進部担当
ロートネーム:みさみさ

「日本スローフード協会」のプロジェクトアシスタントとして、スローフードの活動の支援や、「ロート スローフードアカデミー」の運営事務を担当。現在は女性と子どもの健康を食から支える取り組みに挑戦。

“食べられるのに捨てられる”という事実に衝撃!

私自身の経験では、書籍や海外のドキュメンタリー映画から情報を得ることもありますが、学びを自分事化するためには、実際に見たり体験することが大切だと考えています。アカデミーでも、フードロスを解決するベンチャー企業を立ち上げた人に話を聞いたり、農業の現場で農家の方に直接お話を伺うこともありますが、時にはショッキングなシーンを目にすることもあります。
中でも大きな衝撃を受けたのは、食品リサイクル施設「日本フードエコロジーセンター」を見学した時のことでした。そこでは毎日、食品関連業者から搬入される“まだ食べられるのに捨てられる食糧”が回収され、独自技術で殺菌・発酵させて、畜産の飼料へと作り変えられていきます。
“まだ食べられるのに捨てられる食糧”というと、賞味期限が過ぎていたり、どこかに傷みがあるものだと思っていたのですが、実際は違いました。炊き立てのご飯や総菜、新鮮な野菜、焼き上がって1日も経たないパンなど、見た目では問題のないきれいな食べ物が、大量に、また、絶え間ないほど頻繁に運ばれてくるのです。いかに簡単に食べ物が捨てられているのかを目の当たりにして、思わず胸が苦しくなりました。
しかもそれらは通常、産業廃棄物ではなく一般廃棄物として、年間約2兆円もの税金を使って焼却炉で燃やされると聞き、なおさら深く考えさせられたと同時に、食に対する意識が変わりました。

日本フードエコロジーセンター内の様子 日本フードエコロジーセンター内の様子

・「日本フードエコロジーセンター」について詳しく知りたい方はこちら

小さな変化でも、積み重なると変わる未来がある

以前は、外食でご飯が多いと残してしまったり、スーパーで食材を選ぶ時に、傷がついた野菜を避けたこともありますが、これらもフードロスの一つの要因。些細なことかもしれませんが、食の現状を知ってからは、まずは身近なところから無駄を作らないようにしようと決めました。たとえ1人の小さな変化でも、積み重なると変わっていく未来があると考えたからです。皆さんにも、世界にはお腹がすいてもご飯を食べられない人がいることを知っていただきたいですし、なぜそうなるのか関心を持っていただきたい。そうすれば、少しでもフードロスが減らせるのではないかと思うのです。
例えば、

  • ・無駄な食材を買わないように、冷蔵庫のストックを把握する。
  • ・大量買いをしない。
  • ・すぐに使う食材は、期限の近いものを選ぶ。
  • ・不揃いの野菜を敬遠しない。

こんな小さなことでもいいんです!

むしろ、不揃いの野菜がだんだん可愛く思えてきますよ(笑)。
できることから少しずつ、一緒にはじめていただけたらうれしいです。

規格外野菜

「ロート スローフードアカデミー」では、より深く食について知るために、有志たちが日々勉強を続けています。あるメンバーは、食に対する意識を高め、食を通じて五感と心を育む「フードコンシャスネス」教育のインストラクターの資格を取得し、食育イベントを開催して、子どもたちに食の大切さを伝えています。また、別メンバーは、アカデミーに参加していない社員にも取り組みを知ってもらうために、「やえやまファーム」の収穫作業を行うための研修を企画・実施したりしています。誰もが他人ごとではいられない「食」だからこそ、1人でも多くの人が現実に目を向け、たとえ小さなことでも行動を始めてもらえることを、私たちは願っています。

1人のメンバーがいいね!と言ってます。
1人のメンバーがいいね!と言ってます。