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2020/06/03

産後の尿もれの原因は骨盤底筋のゆるみが原因。直す方法はある?

産後に起きる身体の変化のひとつに、尿もれがあります。重い荷物を抱えたり、くしゃみをしたりしたときに尿がもれてしまうということはめずらしいことではありません。とはいえ、もれる尿の量が多かったり、なかなか尿もれが治まらなかったりすると、このままで良いのかなと心配になりますよね。いつになったら尿もれが治まるのかという不安もあるでしょう。どうして産後に尿もれが起きるのか、いつになったら治るのかといった疑問や尿もれを防ぐための予防策について解説します。参考にしてみてくださいね。

大本沙樹先生

教えてくれたのは

FTPピラティス教育ディレクター:大本沙樹先生

都内スタジオでレッスンを行う他、海外トレーナーが行う研修の通訳やインストラクター養成、国内のイベントやワークショップの講師、海外でのトレードショーなどのプレゼンターも務める。鍼灸師(国家資格)としても活躍中。

産後、尿もれが起こる理由

妊娠や出産によって女性の身体にはさまざまな変化が生じますが、尿もれもそのひとつです。「はじめて尿もれを経験したときはビックリした」という方は多いのではないでしょうか。産後の尿もれはよく起こることとはいえ、気になるのはなぜ起こるのかということですよね。
ここでは、尿もれが起こる理由について解説します。

骨盤底筋群のゆるみ

骨盤底筋群がゆるんでしまうことが、産後に尿もれを引き起こす理由のひとつです。骨盤底筋群は骨盤の底にある筋肉で、子宮・ぼうこう・直腸などをハンモックのように支えて、これらの臓器が体外に出ないように守ってくれています。さらに、骨盤底筋群には排泄をコントロールする役目もあります。骨盤底筋群がゆるむと尿や便が排出され、骨盤底筋群がしまると尿や便が出ないようになっています。
産後に骨盤底筋群がゆるんでしまうのは、リラキシンというホルモンの影響があります。リラキシンは妊娠中や出産前後に分泌され、靱帯や関節部分をゆるませる働きをしています。これは、骨盤を柔軟にして赤ちゃんがスムーズに産道を通れるようにするためです。リラキシンは、出産が終わってすぐに分泌が止まるわけではありません。時間をかけて少しずつ分泌が減少して、やがて止まります。そのため、産後すぐの身体がゆるんだ状態で無理をすると、骨盤をはじめ身体全体にゆがみが生じることがあるのです。
結果として、尿もれだけでなく、肩こり・腰痛・むくみといったさまざまな身体のトラブルにもつながります。

骨盤が後傾していることによる影響

妊娠・出産とは直接関係はありませんが、骨盤が後傾していることも尿もれの原因となります。骨盤が後傾していると、本来はしっかり閉じているべき尿道括約筋と呼ばれる筋肉がゆるんだ状態になるとされているからです。ゆるんだ状態で、くしゃみをする・大きな荷物を抱えるなどの刺激によってお腹にグッと力が入ると尿道括約筋が支えきれず、尿が押し出されてしまうのです。特に日本人女性は骨盤が後継している人が多いため、若い女性でも尿もれが起きることが多いようです。

産後の尿もれはいつまで続く?そのうち治るの?

産後の尿もれはよくあることと聞くと少し安心できるとはいえ、「これがいつまで続くのだろう…」という不安はありますよね。産後の尿もれは身体が回復していくにつれて自然と良くなることが多いといわれています。個人差はありますが、一般的には産後3~4ヶ月くらいすると自然と治まるとされているので、様子をみてみましょう。
産後すぐは出産によるダメージがまだ残っています。産後1ヶ月くらいは安静にして、お腹にグッと力を入れるような動作をしないように心がけましょう。骨盤底筋群へ負担がかからないような生活を意識してくださいね。

骨盤底筋群がゆるんだままだとどうなるの?

ゆるんだ骨盤底筋群は、身体の回復と共に少しずつ元に戻っていきます。しかし、骨盤底筋群が元に戻らずゆるんだままになると、尿もれ以外に「骨盤臓器脱」を引き起こす可能性があるため注意しましょう。
骨盤臓器脱とは、重力で骨盤内の臓器に負荷がかかり、膀胱や子宮、大腸などが身体の外に飛び出してしまう症状のことです。骨盤底筋群が弱くなってしまうと、重力で下がってきた臓器を支えられなくなってしまうのです。実は高齢になるほど、そして日本人の女性に特に多いという傾向があります。手術による治療もできますが、骨盤底筋群が弱いと再発してしまうケースも少なくありません。

産後1年でも遅くない!骨盤底筋群を鍛えて尿もれを防ごう

産後はもちろん、将来も健やかに毎日を過ごすためには、骨盤低筋群をしっかり鍛えて本来の機能を発揮できるようにすることが大切です。骨盤底筋群を鍛えるためのエクササイズやトレーニングを少しずつ行っていくことで、身体に変化がみられるようになるでしょう。産後1年以上過ぎたという方も、遅すぎることはないので、諦めずに取り組んでいきましょう。
しかし、あせって産後すぐに強度の強いストレッチやトレーニングをするのはオススメできません。リラキシンの影響で身体そのものがゆるんだ状態なので、無理に身体を動かすと大きな負担になってしまうからです。長時間立ちっぱなしといった姿勢も身体に負荷がかかるため、外反母趾や足の変形といったトラブルを招く可能性があります。産後すぐは呼吸法など、ゆるやかな動きで会陰や腹部周辺の筋肉をやさしく収縮させることをオススメします。患部の血流を促し、回復が早まるといわれています。
もちろん、心身の回復のスピードは個人によってそれぞれ異なります。エクササイズやトレーニングをはじめるタイミングについては、担当の医師に相談して許可をもらったうえで行いましょう。あなたの身体の声にも耳を傾け、無理しないことも大切です。

寝ながらできる産後の尿もれの予防・改善に役立つ骨盤底筋群を鍛えるエクササイズは、こちらの記事をご覧ください。

まとめ

産後の尿もれは、出産による骨盤底筋群のゆるみなどから起こります。出産を経験した女性なら尿もれになることは、それほどめずらしいことではなく、だいたい3~4ヶ月で治まる方が多いといわれています。骨盤底筋群の回復には、産後すぐの安静も大切だといわれています。尿もれを早く治したい、早く職場復帰したい、家事を頑張りたいといった気持ちがあるかもしれませんが、このタイミングで無理をすると、骨盤底筋群に負担をかけてしまうかもしれません。
出産直後は身体のダメージがまだ回復していないので、産後1ヶ月くらいはリラックスして過ごしましょう。身体が回復したら、医師に相談しながら骨盤底筋群を鍛えるためのエクササイズやトレーニングを少しずつはじめてみてください。骨盤底筋群を正しい位置に保つには、骨盤低筋群をしっかり鍛えることが大切です。少しずつでもエクササイズやトレーニングを続けることで、身体は変化していくでしょう。産後1年以上過ぎた方も諦めず、ぜひ取り組んでみてください。

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