記事
2021/04/28

その不調、気象が原因!? Vol.3 膝や腰、手指などに表れる関節痛

雨や台風の日、季節の変わり目などに、さまざまな不調が現れる“気象病”。私たちには、気圧や気温、湿度などの変化に合わせ、体温を調整するなど身体をコントロールする働きがあります。それは身体を守るための自律神経の働きですが、過剰になると、不調が現れてしまいます。代表的な不調は、頭痛やめまい、気分の落ち込みに加えて、関節痛もそのひとつに挙げられます。ロート製薬が行ったアンケートでも、「雨が降ると膝が痛む」などお悩みの声が多く寄せられました。
なぜ関節痛が起こるのか、防ぐ方法はあるのか、気象病に詳しい先生に、漢方医学の視点から解説していただきます。

後山尚久先生

私が解説します!

大阪医科薬科大学 健康科学クリニック 名誉所長
後山尚久先生

大阪医科大学卒業。大阪医科大学産婦人科助教授、藍野学院短期大学教授、大阪医科大学健康科学クリニック教授などを経て、2020年より現職。漢方医学をベースに、女性のさまざまな悩みに応える。著書に『更年期 からだと心の変化で悩む人に』(NHK 出版)などがある

気象変化による関節痛は、【関節包】の膨張が原因

気圧や気温など、気象の変化で起こる不調といえば、頭痛やめまいが多く聞かれますが、関節痛も決して少なくありません。私のクリニックにも膝や腰、手指の痛みを訴える方が多く来られます。階段を上る、下りるときに膝が痛むと言う声もよく聞きます。患者さんはよく、その痛みを「しくしく痛むような感じ」だと表現します。気象の変化による関節痛は炎症が原因ではありませんから、がつんとした強い痛みではありません。それもあって、歩いたり、重い荷物を持つなどしたときに痛みを感じても、がまんしてしまうことも多いようです。

気象の変化による関節痛は、【関節包(かんせつほう)】という、関節を覆う袋のようなものが関係しています。関節のなめらかな動きをサポートしている関節包が、低気圧の影響を受けて膨張することが痛みの原因です。低気圧で膨張する、というのは、山頂などでお菓子の袋が膨らむのと同じ現象。ふもとに比べて気圧が低い山頂では、袋を抑えつける力が弱くなります。そのために袋がパンパンに膨らんでしまいます。
低気圧によって関節包が膨張すると、血管を圧迫。血液や体液の流れが悪くなり、さらに周囲の神経を圧迫するため、痛みが現れてしまうのです。

関節痛の改善のカギは、【水】と【血】の巡り

【気(き)・血(けつ)・水(すい)】を、身体を支える三つの柱とする漢方医学では、気象変化による関節痛の多くは【血】【水】が原因であると考えます。

関節痛は、血液や体液の巡りをよくすることが改善のカギ。
漢方薬をとり入れることも、ひとつの方法です。溜まった水分を流しながら、温めることで血管を広げる作用がある【防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)】は、関節痛を改善する助けになるでしょう。もうひとつ【桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)】という漢方薬もあります。これは【水】の滞りがない人が服用する薬ですが、血行不良を改善する作用があります。痛みの原因が【水】なのか【血】なのか、判断はなかなか難しいものですから、服用の際は漢方医や漢方に詳しい薬剤師に相談してみてください。
痛みが表れたときには、冷やさないこと。気象変化による関節痛の場合、冷やすと血行が悪くなって逆効果。温めることが基本です。
また、その関節痛が炎症性のものでないか、骨の異常によるものでないかを調べておくことも大切です。どこかで一度、整形外科などで検査してもらうようにしましょう。

軽めの運動や入浴が、関節痛の予防に!

予防のためには、ストレッチやウォーキングなどの運動をとり入れるといいでしょう。じんわりと汗をかくくらいの軽めの運動は、【血】と【水】のめぐりをよくすることになります。
ゆっくりお風呂に入ることも予防につながります。気象変化による関節痛は自律神経の乱れが原因ですから、リラックスする、つまり副交感神経を優位にすることが大事です。お風呂でマッサージをするのもいいですね。痛みが表れる部分をマッサージすると、血流もよくなります。マッサージは、心臓へ向かって血液を流すように優しく行ってください。
膝や腰に痛みが出る場合はサポーターの使用も有効です。関節包の膨張を防ぐ働きはありませんが、関節の動きを補助してくれます。動かしにくい、動かすと痛い場所に着けるといいでしょう。手指に痛みが出る場合は、テーピングテープを活用してください。

気象病は、その人の一番敏感なところに表れるものです。つらい症状をできるだけ軽くすること、症状が出ないように予防に努めることを心がけてください。気温差が大きくなりそうなとき、雨や台風になりそうなときは、早めに対策することも大切です。
私は、気象病はその人の個性のひとつだと考えています。治らないと落ち込むことなく、うまくつき合う方法を考えていきましょう。

【水】を巡らせる

・「防已黄耆湯」について詳しく知りたい方はこちら

関連記事
・その不調、気象が原因!? 気象病の二大症状、頭痛とめまい
・その不調、気象が原因!? Vol.2 冬に多くなる、気分の落ち込み

8人のメンバーがいいね!と言ってます。
8人のメンバーがいいね!と言ってます。