カラダに必要なミネラルといえば、カルシウムや鉄を思い浮かべる人は多いと思いますが、「亜鉛」についてはいかがでしょうか?あまり馴染みがないかもしれませんが、亜鉛は健康維持に欠かせない大切なミネラルの一つ。全身の細胞内に存在し、さまざまな酵素の構成要素として体内で働いています。多くの食べ物に含まれているので、偏りのない食事をしていれば不足することは少ないものの、実は日本の成人の亜鉛摂取量は、以下の表のように推奨量を下回っているとの調査結果もあります。不足すると、健康や美容、免疫力にも影響を及ぼすこともあるから、今こそ改めて亜鉛のパワーに注目!毎日の食事で上手に摂れるオススメレシピもご紹介します。
[日本の成人の亜鉛推奨量と実際の摂取量]
mg | 推奨量※1 | 実際の摂取量※2 |
---|---|---|
成人男性 | 11.0 | 8.9 |
成人女性 | 8.0 | 7.3 |
※1 推奨量は厚生労働省H「eJIM」、摂取量は厚生労働省「平成27年度国民健康・栄養調査結果の概要」より
※2 推奨摂取量は1人1日あたり平均値(mg)
人間のカラダは、食べ物の消化・吸収やDNAの合成、傷の修復など、生命活動のためのさまざまな化学反応によって成り立っています。その化学反応を進める働きがある物質が酵素であり、その酵素を活性化する成分の一つが亜鉛です。亜鉛が活性化のカギを握る酵素の数は約300種類にも上るといわれ、全身の細胞に存在するゆえに、消化やエネルギー代謝、生殖、免疫システムに至るまで、驚くほど多くの働きに関与しています。成人の体内に含まれる亜鉛の量は約2gとごく微量ですが、このように重要な働きを担っているのです。
重要な成分である亜鉛が不足すると、思わぬところに影響が現れることも。
タンパク質でできている肌、特に表皮には多くの亜鉛が存在し、タンパク質の合成に関わっています。そのため、亜鉛が不足すると、タンパク質の代謝が低下するほか、外からの刺激や肌内部の炎症を抑える自己防衛力も低下することで、肌荒れしやすくなってしまいます。
肌と同じくタンパク質でできている髪や頭皮にも亜鉛が存在します。亜鉛不足になると自己防衛力が低下し、毛穴周りの肌にトラブルが発生することで抜け毛が起こります。ひどくなると、円形脱毛症になることも。
舌の表面には、味を感じる「味蕾(みらい)」といわれる細胞があります。亜鉛はその味蕾を含めた舌表面に多く存在し、味蕾を作る味細胞の代謝に関わっています。そのため、亜鉛が不足すると、代謝が低下して味蕾の数が減少し、味を感じにくくなります。
亜鉛は、骨の代謝に関係する成長因子の分泌にも関係しています。骨は破壊と形成がバランスよく行われることで健康に保たれますが、亜鉛不足になると形成が低下し、破壊が上回ってしまうので、骨がもろくなる骨粗しょう症になりやすくなります。
一般的に肌が傷ついた時は、傷口の汚れや細菌を浄化する際に炎症が起こります。その後、線維芽細胞が新しい細胞を生み出すことで傷がふさがり治っていきます。亜鉛はタンパク質の合成や細胞の再生に関わっていることに加え、強い抗酸化作用を備えているのも特徴。そのため、亜鉛不足になると、これらの機能が低下し、さらには線維芽細胞の働きも低下してしまうので、傷が治りにくくなるのです。
ほかにも、消化管の粘膜が萎縮し、消化機能が低下することで、食欲低下や下痢を起こしやすくなったり、免疫力が低下することなども分かっています。亜鉛は体内で作ることができないうえに、便や汗などと一緒に排泄されてしまうので、毎日の食事から摂ることが必要なのです。
亜鉛不足がさまざまなトラブルを招きやすいことをご説明しましたが、実は“一汁三菜”のようなきちんとした食事が取れていれば、ある程度の亜鉛量は摂取できると言われています。ただし、野菜しか食べないようなダイエットを続けていると十分に摂れず、また加工食品を食べ過ぎると、食品添加物に多く含まれるフィチン酸によって吸収が妨げられて、亜鉛不足になることも。
さらに、亜鉛は汗と一緒に体外へ流出するので、頻繁にスポーツをする人や汗をよくかく人は不足しやすいほか、肝疾患や腸疾患などの特定の病気や高齢者、妊娠・授乳中の人も不足しやすい傾向に。
健康のためにも美容のためにも、亜鉛豊富な食べ物を摂りたいから、どんな食べ物に亜鉛が多く含まれているのか見てみましょう。
[亜鉛含有量※3]
食品名 | 成分量mg(/100g) |
---|---|
牡蠣(くん製油漬缶詰) | 25.4 |
牡蠣(生) | 14.5 |
ごまさば | 8.4 |
牛ひき肉 | 7.6 |
牛もも肉(赤身) | 7.5 |
ナチュラルチーズ(パルメザン) | 7.3 |
煮干し(かたくちいわし) | 7.2 |
ピュアココア | 7.0 |
豚レバー | 6.9 |
まいたけ(乾燥) | 6.9 |
たらばがに | 6.3 |
乾燥わかめ | 5.2 |
高野豆腐 | 5.2 |
※3 文部科学省 食品成分データベース「亜鉛含有量TOP100」より
摂取量によって微妙な違いはあるものの、亜鉛の腸管吸収率は約30%前後とされています。ビタミンCは亜鉛の吸収を良くすると言われているので、レモンや柚子などのかんきつ類と一緒に摂るのもいいですね。
教えてくれたのは
栄養士、調理師、国際薬膳師の資格を持つ
ロートネーム:さつきちゃん
健康や美容のためにも欠かせない亜鉛にくわえて、美肌や美髪づくりに役立つタンパク質や、亜鉛の吸収を高めるビタミンCがたっぷり摂れるオススメレシピをご紹介します。
※レシピはすべて「ロート製薬株式会社 スマートキャンプ」の提供となります。
●材料(4人分)
牛肩ロース(切り落とし)…200g
玉ねぎ…300g
万能ねぎ…少々
松の実…12g
芽ひじき(戻したもの)…8g
ご飯(七分搗き米)…520g
【調味料A】
昆布だし…300g
しょうゆ…34g
みりん…36g
砂糖…6g
酒…40g
●作り方
●材料(6人分)
カリフラワー…100g
ブロッコリー…100g
レモン…8g
【調味料A】
はちみつ…大さじ2
レモン汁…大さじ2
オリーブ油…大さじ2
塩…少々
コショウ…少々
●作り方
●材料(4人分)
トマト…200g
わかめ…4g
春菊…40g
たまご…1個
【調味料A】
鶏がらスープ…680㏄
うす口しょうゆ…12g
酒…14g
塩…少々
●作り方
●材料(4人分)
舞茸…120g
うす揚げ…1/2枚
万能ねぎ…適量
だし汁(昆布)…680㏄
麦味噌…16g
豆味噌…16g
●作り方
全身の働きに関係する大切な成分だからこそ、不足するといろいろなところに不調をきたしてしまう亜鉛ですが、赤身肉や魚介類に多く含まれているので、日常的に摂りやすいのはうれしいところ。なるべく加工食品に頼らず、健康的な食事を心がけて亜鉛不足を防ぎましょう。