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2019/10/02

保湿のカギを握る「乳化」とは?ロートの研究開発の裏側に迫る!

秋冬になると、肌で感じる風も変わり、空気もなんだか乾燥気味。そこで感じるのがお肌のカサカサ乾燥や、かゆみなどの皮膚トラブル。
だから、「とにかく保湿!」と思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、肌にたくさんの水分を与えようと化粧水を塗っても、なんだか乾燥する…という経験はありませんか?
それは、せっかく補給した水分が逃げてしまうから。水分を逃がさないように、肌にちゃんとうるおいをとどめるために大切な役割を果たすのが、「乳液」なのです。そして実は、この乳液にも使われている「乳化技術」こそが、保湿の鍵を握る重要なポイント。今回は、ロートでも長年研究を重ねてきた「乳化技術」の裏側に迫ります。

開発担当者 ロートネーム:まっすーさん

この人に聞きました!

開発担当者 ロートネーム:まっすーさん

製品開発を中心に20年以上研究職に従事。外用剤のことならいくらでも語れるベテラン研究員。好きな言葉は、「過去は運命、未来は可能性」。人と人の繋がりを大切にすることをモットーに、日々仕事に取り組んでいる。

そもそも「乳化技術」ってなに?

普通に水分と油を混ぜると分離してしまいますよね。そこを分離しないように混ぜて均一にする技術を「乳化技術」と言います。
スキンケアで身近な「乳液」や「クリーム」、最近では「化粧水」にも油分が含まれているものもあります。夏の必需品の「日焼け止め」や秋冬に欠かせない「ハンドクリーム」「ボディクリーム」など私たちの身近なものに使われている技術です。

超しっとりコクがある、なのにサラサラ!?ここがすごいロートの「乳化技術」

乳化技術には、W/O(ウォーターインオイル)型とO/W(オイルインウォーター)型の大きく2つあります。

(1)W/O(ウォーターインオイル)型
外側がオイルで中に水が入っている形の乳化。外が油なので耐水性がよく、しっとり感が強く、肌馴染みがよい使用感です。

(2)O/W(オイルインウォーター)型
外側が水で中に油が入っている形の乳化。外が水なのでみずみずしい感触で、うるおい感が強く、べたつきが苦手な人も気持ちよい使用感です。

O/W(オイルインウォーター)型 O/W(オイルインウォーター)型 説明図

1993年発売のメンソレータムハンドベールの「しっとりなめらかクリーム(赤)」に(1)W/O技術が使われ、ロートの中でW/O型の乳化技術が確立されたのはこのときだと言われています。塗るときはしっとりコクがあるのに、手に取って伸ばすと力が加わり乳化の構造が崩れ、するっと気持ちよくサラサラと伸ばすことができます。「ハンドクリームでしっかり保湿したいのに、塗ったらベタベタだとストレスがたまる…」そんなお客様の声に寄り添った商品として開発されました。この使用感は他で再現しようとしてもなかなか出来ないので、今でも社内では奇跡の処方だと語り継がれています。

メンソレータム薬用ハンドベール しっとりなめらかクリーム

販売名:メンソレータム薬用ハンドベール しっとりなめらかクリーム 医薬部外品

・「メンソレータム薬用ハンドベール しっとりなめらかクリーム」について詳しく知りたい方はこちら

実は難しい!乳化技術を支える職人技

ロートの乳化技術の開発の現場では、使うオイルの種類や量、様々な組み合わせを試しながら、ベストな使用感かつ安定的な製剤を作り出しています。使用感と安定性の両立は非常に難しく、例えデータ通りに作っても失敗することも。これらを両立させるには、膨大な数の処方検討と長年の経験による研究員の職人技が欠かせないのです。

ここだけの話 失敗談からの成功

かゆみを伴う乾燥肌の治療薬・ADローションの開発秘話

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ロートの中でも人気の高い「ADシリーズ」は、コッテリとしたクリームが主流の乾燥肌治療薬だったのですが、もっとサラサラと軽くベタつかない商品が作れないかと検討を重ねていました。
しかし製剤の粘度を下げると成分が分離してしまい、なかなかうまくいきません。試行錯誤を続けた結果、ゲル状にして分離を防ぐ方法に辿りつきました。工場でテスト生産を始めたところ、試作品と比べ格段にサラサラの気持ちいい製剤が完成し、「やった!うまくいった!」と思わずガッツポーズ。
しかし喜びもつかの間、一晩おいて翌日見てみると、なんと製剤が水と油に分離していたのです…!原因は、研究所よりも工場の機械は攪拌力が強く、ゲルの構造が壊れてしまったからでした。このままでは発売できない!という緊急事態の中、研究員総出で知恵を出し合い急ピッチで検討を繰り返した結果、何とか処方の改良に成功。ピンチを切り抜け無事発売できたことは、今となっては良い思い出です。

このような苦労の末に完成したADローションは、今ではAD乳液として生まれ変わり、乾燥した肌に起こるかゆみをすばやくしずめながら、次第にかゆみの起きにくいしっとりした肌へと治していく治療薬として発売されています。

メンソレータムAD乳液b

販売名:メンソレータムAD乳液b 第2類医薬品

・「メンソレータム AD乳液b」について詳しく知りたい方はこちら

より使用感にこだわってさらに進化させた「高圧乳化技術」!

ロートがより使用感や肌への優しさへこだわるために取り入れた、「高圧乳化」という技術があります。通常乳化させる際の分子は約10マイクロサイズ(毛穴サイズ)の大きさですが、機械で高圧をかけることにより、200~300ナノサイズという極小サイズにまで細かくして乳化させる技術です。細かいレベルで乳化できていることで、よりサラサラッとした使用感が生まれます。また、界面活性剤の量が少なく乳化することができるため、より肌への負担が少ないものが作れます。

超高圧乳化装置のしくみ

ロートでこの技術を最初に搭載した商品が、APソフト。繰り返す皮膚炎や、かゆみの治療薬として発売された商品です。保湿力は高いが、普通はベタついて重たく、使用感が悪いと言われるワセリンを、高圧乳化技術により劇的にサラサラな製剤へと実現しました。とてもしっとりするのにべたつかない塗り心地です。
医薬品は効き目ばかり重視されがちで、使用感にはあまり重きをおかれていないこともありますが、ロートは、治療のために毎日使うものだからこそ使用感もよくしたいと考え、当時は医薬品ではなかなか使われることの無かった高圧乳化技術を採用し、治療と使い心地の良さの両立を目指しました。このときに培われた技術やノウハウは他の製品にも応用され、今の様々な商品作りに活かされています。

開発者からのメッセージ

ロートではこれらの乳化技術を用いて、乳液やクリーム製剤開発に長年取り組んでおり、様々な苦労や時には失敗も乗り越えながら、たくさんの技術やノウハウが培われてきました。これらをさらに次の商品へと活かし、お客様に喜んでいただける商品を1つでも多く生み出すために、日々研究を続けています。昔から受け継がれる技術と想いが詰まった商品たちを、ぜひ使っていただけると嬉しいです。

1人のメンバーがいいね!と言ってます。
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